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介護施設で今日から使える高齢者でも簡単で楽しいレクリエーション~進行のコツ~

佐藤 ありさ 佐藤 ありさ

目次

こんにちは!ケアコラボの佐藤です。

高齢者介護施設で働く皆さま、レクリエーションの企画に頭を悩ませていませんか? 「いつも同じ内容でマンネリ化してしまう…」「準備に時間がかけられず、いつも簡単なものになってしまう…」といった悩みは、多くの方が抱えているのではないでしょうか。

本記事では、そんな悩みを解決するために、介護施設の高齢者が無理なく楽しめるレクリエーションをご紹介します。座ってできる体操から、道具なしで簡単にできる脳トレ、そしてみんなで盛り上がるゲームまで、現場ですぐに実践できる具体例をお伝えします

また、安全管理や進行のコツに加え、レクリエーションの楽しさをその場だけで終わらせず、質の高いケアやご家族との信頼関係につなげる「記録・共有」の大切さもあわせて解説します。

レクリエーションの実施中、スタッフが写真撮影をしている写真

介護現場におけるレクリエーションの目的と役割

身体機能の維持・向上

介護施設の高齢者は、加齢に伴い筋力や体力が低下しやすく、動かない時間が長くなると廃用症候群のリスクが高まります。レクリエーションを通じて楽しみながら体を動かすことは、無理なくリハビリ効果が得られる絶好のチャンスです。
指先を使う作業や全身での運動を取り入れることで、関節の拘縮の予防や筋力の維持、立ち上がりや歩行といった日常生活動作(ADL)の低下を防ぐ効果が期待できます。

脳の活性化による認知症予防

クイズや計算、手先を使うレクリエーションなどは、脳の血流を促し活性化させる効果があります。昔の記憶を思い出す回想法を取り入れた活動や、新しいルールを理解してゲームに参加することは、脳によい刺激を与えることができます。
認知症の予防だけでなく、認知症状の進行をゆるやかにしたり、周辺症状(BPSD)を和らげたりする、非薬物療法としても重要視されています。

他のご利用者とのコミュニケーション促進

特に介護施設に入居されているご利用者は、他の方との関わりが希薄になり、孤独感を感じてしまうことがあります。レクリエーションは、ご利用者同士が声を掛け合い、協力し合う場にもなります。共通の話題や活動を通じて自然に会話をしたり笑ったりすることで、孤独感を感じることを防ぐことができます。

生活リズムを整えQOLを向上させる

日中にレクリエーションで適度に活動することで、夜間の良質な睡眠につながります。昼夜のメリハリがつくと生活リズムが整い、日中の活動意欲の向上にも期待できます。
また、「今日は何があるだろう」という楽しみや、何かを作り上げたときの達成感は、結果として生活の質(QOL)を高めることにつながります。

介護スタッフとご利用者の信頼関係を深める

レクリエーションは、普段のケア業務の中では見られないご利用者の新たな一面を発見するチャンスです。楽しそうな笑顔や、昔取った杵柄を披露する姿に触れることで、スタッフはご利用者への理解を深めることができます。一緒に楽しみ、笑い合う時間は、心の距離を縮めます。「あの時は楽しかったですね」といった共通の思い出は、その後のケアにおける信頼関係の土台となります。

ご利用者とスタッフが楽しそうに話をしている写真

【ジャンル別】高齢者介護施設ですぐに実践できるレクリエーション例

座ってできる体操や、ボールを使った「運動レク」

ラジオ体操

日本人なら誰もが知っている「ラジオ体操」。音楽が流れると自然と身体が動くという方も多く、毎日行っている高齢者施設も多いのではないでしょうか。立って行うのが難しい場合は、椅子に座ったままでも十分な効果があります。腕を大きく振る、身体をひねるなどの動作は、全身の血流を良くし、関節の可動域を広げる効果が期待できます。

風船バレー

通常のボールよりも落下速度が遅い風船を使うことで、高齢者でもラリーを続けやすいのが特徴です。円になって座り、全員で風船を落とさないように打ち合います。手を伸ばす動作は自然と背筋を伸ばし、肩や腕の可動域訓練になります。
チーム全員で「100回目指しましょう!」と目標を立てることで、一体感も生まれます。

足を使ったタオルのたぐり寄せ(タオルギャザー)

床に敷いたタオルを、足の指だけを使って自分の方へたぐり寄せる運動です。「タオルギャザー」とも呼ばれ、足裏の筋力を鍛えて転倒を予防する効果が高い運動です。単調になりがちですが、タオルの端にお手玉やペットボトルを乗せて「荷物運びレース」にすると、難易度が上がり、「頑張れ!」と応援が飛び交う熱いゲームに変化します。

タオルギャザーをイラストで解説している写真

ボウリング

ペットボトルやトイレットペーパーの芯などをピンに見立て、ボールを転がして倒す本数を競うレクリエーションです。ボールの重さを調整すれば、片麻痺の方や車椅子の方でも参加ができます。目標物を狙ってボールを投げる動作は集中力を養い、上半身の筋力維持やバランス感覚の向上に役立ちます。

玉入れ

運動会でお馴染みの玉入れは、座ったままでも熱中できる人気のレクリエーションです。カゴの高さを調整したり、カゴをスタッフが背負って動いたりと、難易度の調整がかんたんにできるのも良いところです。
腕を高く上げて玉を投げる動作は、肩周りの筋肉をほぐし、拘縮予防になります。チーム対抗戦にすることで、普段はあまり話さないご利用者とコミュニケーションを取るきっかけにもなります。

ホワイトボード活用やクイズなどの「脳トレレク」

文字並べ替えクイズ

「い・す・か」→「すいか(西瓜)」のように、バラバラになった文字を並べ替えて単語を作るクイズです。ホワイトボードにマグネットで文字を貼るのもおすすめです。
文字を認識し、頭の中で組み合わせる作業は、言語中枢を刺激し、構成力を鍛える脳トレになります。季節の単語や、その日の昼食のメニューなどを問題にすると、季節感や食欲の喚起にもつながります。

古今東西ゲーム(連想ゲーム)

「赤いもの」「都道府県の名前」「春の花」など、特定のお題に沿った言葉を順番に答えていくゲームです。記憶の引き出しから言葉を探し出す作業は、脳の活性化に非常に有効で、認知症予防の効果が期待できます。正解・不正解にこだわりすぎず、ヒントを出したり、出てきた言葉から会話を広げたりして楽しむことがポイントです。

ことわざ穴埋めクイズ

「犬も歩けば(   )」のように、誰もが知っていることわざの一部を空欄にして回答してもらうゲームです。長期記憶は認知症の方でも保たれていることが多く、自信を持って答えられるため、自尊心の向上につながります。ことわざの意味を話し合ったり、関連する昔話に花を咲かせたりと、コミュニケーションのきっかけにもなります。

計算問題

「100引く7は93、次は86…」と連続して同じ数字を引いていくゲームや、「1000円で120円のパンを買ったお釣りは?」といった買い物シミュレーションを行います。数字を一時的に記憶しながら計算する作業(ワーキングメモリ)は、脳を強く刺激します。勉強のようにならないよう、トランプの数字を足したり、サイコロを使ったりと、遊びの要素を取り入れて楽しく行うのがコツです。

間違い探し

左右に並べた似ているイラストを見比べて、違う箇所を探すゲームです。ホワイトボードに大きく掲示したり、印刷したものを一人一枚配付したりします。
観察力と集中力が必要になりますが、見つけた時の「アハ体験(ひらめき)」はとても良い刺激となります。難易度を調整しやすく、見つけた人が他の人に教えないようにするなどのルール作りで、全員が楽しめるゲームです。

音楽療法や口腔体操を取り入れた「音楽レク」

合唱・カラオケ

懐かしい歌謡曲や童謡、唱歌をみんなで歌います。歌詞を読みながら声を出すことは、視覚と言語機能のトレーニングになり、お腹から声を出すことで心肺機能の向上やストレス発散効果があります。昔の歌を歌うことで当時の記憶が蘇り、回想法としての効果も期待できます。

イントロクイズ

曲の冒頭部分だけを流して曲名を当てるクイズです。知っている曲なのに名前が出てこない「喉まで出かかっている」状態が脳をほどよく刺激します。正解が出た後はその曲をみんなで歌ったり、「この曲が流行った頃は何をしていましたか?」とインタビューしたりすることで、記憶と会話を引き出すことができます。

リズム合奏

タンバリン、鈴、カスタネット、鳴子などの楽器を使い、音楽に合わせてリズムを刻みます。楽器がない場合は手拍子でも構いません。耳で音楽を聴き、それに合わせて身体を動かすことは、聴覚と運動機能の協調性を高めます。認知症が進んだ方でも笑顔で参加しやすいのが特徴です。

パタカラ体操

食べるために必要な口や舌の動きを鍛える口腔体操です。「パ(唇を弾く)」「タ(舌先を弾く)」「カ(喉の奥を使う)」「ラ(舌を丸める)」の発音を、音楽に合わせてリズミカルに行います。食事前のレクリエーションとして取り入れることで、唾液の分泌を促し、誤嚥を予防する効果があります。

手遊びうた

「ずいずいずっころばし」や「お寺の和尚さん」など、歌に合わせて手や指を動かします。歌うことと手を動かすことの二つの動作を同時に行う「デュアルタスク(二重課題)」となり、脳の活性化に非常に高い効果があります。少し速度を上げたり、左右で違う動きをしたりと難易度を上げることで、笑いが生まれ、盛り上がるレクリエーションになります。

季節の制作や手芸を楽しむ「ものづくりレク」

季節の壁面飾り

模造紙などの大きな台紙に、季節に合わせた飾り付けを全員で協力して作ります。春なら桜、夏なら花火などを、折り紙や色画用紙で作って貼り付けます。個々の得意分野に合わせて「切る係」「折る係」「貼る係」と役割分担ができるため、全員が参加意識を持てます。完成した作品を施設内に飾ることで、達成感とともに季節の移ろいを感じることができます。

高齢者が折り紙をしている写真

塗り絵

下絵に色を塗るシンプルな活動ですが、色の選択や配置を考えることは脳へのよい刺激になります。指先を使うため巧緻性(こうちせい)の維持にも役立ちます。集団行動が苦手な方でも、自分のペースで没頭できるため落ち着いて過ごせます。近年は「大人の塗り絵」として、風景画や名画などクオリティの高い下絵も多く、完成後の作品を鑑賞する楽しみもあります。

習字・書初め

墨の香りと筆の感触は、高齢者にとって馴染み深く、精神統一やリラックス効果が高い活動です。お手本を見て文字を書くことは、空間認識能力や集中力が必要となります。半紙に向かう時の凛とした空気感は、普段のレクリエーションとは違った心地よい緊張感をもたらします。
また新たな年に書初めをし、新年の目標を立てることで、高齢者介護施設で過ごす中でも前向きな気持ちでスタートをすることができます。

小物づくり(手芸)

フェルトのコースターや毛糸のタワシ、写真立てなど、実用的な小物を作ります。手先を使う作業は脳の血流を増やし、認知症予防に効果的です。「誰かにプレゼントする」「自分の部屋で使う」という明確な目的があるため、意欲的に取り組みやすいのが特徴です。
完成品をご家族にプレゼントして喜ばれることも、大きなモチベーションになります。

廃材工作(かんたんなDIY)

牛乳パック、ペットボトル、トイレットペーパーの芯などの廃材を利用して作品を作ります。ペン立てや小物入れなど、身近な材料が便利な道具に変わる楽しさがあります。工夫して形を作る創造力が養われますし、材料費がかからないため事業所側としても実施しやすいメリットがあります。

道具なしでスキマ時間に盛り上がる「かんたんレク」

制限つきしりとり

誰もが知っているしりとりですが、ただ続けるだけでなく「3文字の言葉」「食べ物限定」などの制限を加えることで、ゲーム性が増し、脳への負荷を高めることができます。道具がいらず、場所も選ばないので、入浴の待ち時間や食前のちょっとしたスキマ時間に行うのに最適です。ホワイトボードに書き出しながら行うと、視覚的な刺激も加わりより効果的です。

後出しジャンケン

スタッフが出した手に、「勝ってください」または「負けてください」という指示に従って、後出しでジャンケンをします。見た情報を処理し、指示に合わせて自分の手をコントロールする必要があるため、前頭葉のトレーニングとして非常に優秀です。ついつい勝ってしまう(指示通りに負けられない)ことが笑いを誘い、楽しく脳トレができます。

グーパー体操

「グー」と「パー」の動きを繰り返す体操です。胸の前で「グー」、前に突き出して「パー」といった動きをリズムよく行います。「右手はグーで前に、左手はパーで胸に」と左右で違う動きを指示すると、難易度が上がり脳が混乱しますが、その「混乱して考える」プロセスこそが脳の活性化につながります。失敗しても笑い合える雰囲気で行うのがよいでしょう。

鏡合わせゲーム(まねっこ)

向かい合ったスタッフの動きを「鏡」のように真似するゲームです。スタッフが右手を上げたら、ご利用者は左手を上げます。視覚情報を瞬時に脳内で変換して身体を動かすため、認知機能と身体機能の連動性を高めます。最初はゆっくりと、その後徐々にスピードを上げたり、変なポーズを入れたりすることで、身体をほぐしながら大いに盛り上がります。

早口言葉

「生麦生米生卵」「隣の客はよく柿食う客だ」などの早口言葉を、3回続けて言ってもらいます。口周りの筋肉や舌を素早く動かす必要があり、口腔機能の向上や滑舌の改善に効果的です。上手く言えなくても、噛んでしまったり詰まったりすること自体が面白く、自然と笑いが起きます。大きく口を開けて発声することで、表情筋のリラックスにもなります。

レクリエーションを成功させる企画・準備の進め方

ご利用者の身体状況や趣味・嗜好の情報を集める

企画段階で最も重要なのは、参加するご利用者の情報をしっかりと把握することです。片麻痺や難聴、視力低下などの身体状況を確認し、安全に参加できる内容かを検討します。
また、過去の職業や趣味、好きな音楽などの生活歴を知ることで、ご利用者に喜んでもらえる企画を立てやすくなります。例えば、元大工の方には工作レクで活躍してもらうなど、個性を活かした役割作りも可能になります。

安全性を考慮したレイアウトと物品の準備

レクリエーション実施場所の広さや照明の明るさ、床に障害物がないかなど、環境の安全確認は不可欠です。車椅子の方同士がぶつからない十分なスペースを確保し、転倒リスクを減らす座席配置を考えます。
また、必要な道具は事前にリストアップし、不備がないか、破損していて危険ではないかを確認します。進行中に道具を探して中断することがないよう、スムーズに取り出せる位置に準備しておくことが大切です。

スタッフの役割分担と緊急時の対応シミュレーション

当日の進行をスムーズにするため、司会進行役(メイン)と、利用者のサポート役(サブ)の役割分担を明確にします。サブスタッフは、耳が遠い方への声かけや、動作が遅れがちな方の補助に回ります。また、万が一の転倒や急変時に誰がどう動くか、緊急時の対応フローも確認しておきます。特に興奮しやすいレクの場合は、クールダウンの方法も共有しておくと安心です。

スタッフがレクリエーションのための情報共有をしている写真

マンネリ化を防ぐための情報収集のコツ

毎回同じ内容ではご利用者もスタッフも飽きてしまいます。新しいアイデアを取り入れるために、書籍やインターネットの活用はもちろん、スタッフ間で「あの利用者はこんな反応だった」という情報を共有し合うことが重要です。成功したレクや失敗した理由を「ネタ帳」としてストックしておくと、企画に詰まった時の助けになります。
他施設の事例を参考にしたり、季節行事を組み合わせたりするのもおすすめです。

当日の進行とご利用者に楽しんでもらうためのコツ

開始前のアイスブレイク

いきなりゲームを始めるのではなく、まずは緊張をほぐすアイスブレイクを行います。かんたんな挨拶や天気の話、季節の話題から入り、「今日はみんなで笑いましょうね」といった声かけで場の空気を温めます。軽いストレッチや深呼吸を取り入れるのも効果的です。参加者の表情が柔らかくなり、リラックスした状態で本番に入ることが、レクリエーションの成功率を大きく左右します。

わかりやすいルール説明

高齢者の中には耳が聞こえにくい方や、認知機能の低下により複雑な説明を理解しにくい方もいます。ルール説明は、大きな声でゆっくりと、簡潔に行うのが鉄則です。言葉だけで説明するのではなく、ホワイトボードに図を書いたり、実際にスタッフが動作を見せたりして、視覚的にも情報を伝えます。「難しそう」と思わせないよう、まずはかんたんな練習から始めるのも良い方法です。

スタッフがとにかく楽しむ

レクリエーションの雰囲気は、進行役のスタッフが作り出すものです。スタッフ自身が恥ずかしがらず、オーバーリアクションで楽しむ姿を見せることで、ご利用者も「楽しんでいいんだ」という気持ちになります。失敗してもそれを笑いに変えるくらいの余裕を持ち、明るい笑顔と大きな声で盛り上げましょう。スタッフが楽しんでいるかどうかは、必ずご利用者にも伝わっていきます。

スタッフと高齢者が笑顔で楽しそうにレクリエーションを実施する写真

ご利用者への声かけ

ゲーム中は、すべての参加者が楽しく過ごせるよう配慮します。「上手ですね!」「その調子です!」といったポジティブな言葉を積極的にかけることが大切です。うまくできなかった場合でも、「惜しいですね!次はきっとできますよ」と前向きなフォローを入れます。
また「次は〇〇をやりましょうね」、「X月X日にやりましょうね」と未来の約束をしておくことも、介護施設のご利用者に前向きに生活していただける理由にもなります。

次回の改善につなげるための振り返り

レクリエーション終了後は、スタッフ間で簡単な振り返りを行います。「どの部分が盛り上がったか」「誰が参加しづらそうだったか」「ルールに無理はなかったか」などを話し合い、次回の改善点を見つけます。また、ご利用者から「楽しかった」「難しかった」といった感想を直接聞くことも重要です。PDCAサイクルを回すことで、より質の高いレクリエーションへと進化させていくことができます。

レクリエーション実施時に注意すべき安全管理とマナー

転倒や怪我を防ぐための環境整備と体調のチェック

レクリエーション開始前には、必ず参加者のバイタルチェックや顔色、体調の確認を行います。少しでも体調が優れない方は見学にするなどの判断が必要です。実施中は、興奮して立ち上がったり、道具を取りに行こうとしてバランスを崩したりするリスクがあります。足元のコード類や不要な物品は片付け、スタッフは常に死角がないよう配置につき、転倒事故を未然に防ぐ環境を整えます。

気が進まないご利用者への無理強いは避ける

レクリエーションへの参加はあくまで任意であり、ご本人の意思を尊重することがとても大切です。「やりたくない」と拒否されている方に無理に参加を強要すると、ストレスを与えたり、スタッフとの信頼関係を損ねたりする原因になります。その場で見ているだけでも参加の一つと捉え、「見学だけでもどうですか?」と優しく促したり、別の過ごし方を提案したりする柔軟な対応が求められます。

トラブルを防ぐための席順やチーム分けの配慮

ご利用者同士の人間関係には相性があります。仲の良い方同士を近くにする、あるいはあまり関係が良くない方同士は距離を離すなど、席順やチーム分けには注意をします。また、勝敗にこだわりすぎて喧嘩になることを防ぐため、勝ち負けだけでなく「協力すること」や「参加すること」を評価するルール設定にするなど、トラブルを未然に防ぐ工夫が必要です。

感染症対策を考慮した距離と衛生管理

集団で行うレクリエーションでは、感染症のリスク管理も重要です。座席の間隔を十分に空け、密接にならないようなレイアウトにします。歌唱レクなど飛沫のリスクがある場合はマスク着用を徹底し、換気を十分に行います。また、使用するボールや道具は、使用前後にアルコール消毒を行うなど、衛生管理を徹底することで、安心して楽しめる環境を提供します。

レクリエーションの効果を最大化する「記録」と「情報共有」の重要性

日常会話やご家族から得た「趣味・背景」を企画の種にする

レクリエーションのヒントは、日々のケアの中に隠れています。入浴介助や食事介助の際の何気ない会話などから、「昔は編み物が得意だった」「野球観戦が好きだった」といった情報を拾い上げ、記録に残しておくことが重要です。こうした個人の嗜好を企画に反映させることで、「私のことを分かってくれている」という意識につながり、参加意欲を大きく高めることができます。

▼ご利用者のその人らしさを知る「人生録」機能を活用した 社会福祉法人堺あすなろ会さまの事例▼

文章では伝わらない「表情」や「臨場感」を写真や動画で残すメリット

「楽しんでいた」という文章だけの記録では、その場の熱量やご本人の表情までは伝わりにくいものです。レクリエーション中の真剣な眼差しや笑顔を、写真や動画で記録することは非常に価値があります。言葉では表現しきれない臨場感を、スタッフ間だけでなく、後述するご家族とも共有することが可能になります。

▼動画を活用した 医療法人三九会さまの事例▼

ご家族に活動の様子を共有して安心感と喜びを届ける

離れて暮らすご家族にとって、介護施設でご本人がどう過ごしているかは大きな気がかりです。レクリエーションをしながら楽しそうに過ごす写真や動画を共有することで、ご家族に大きな安心を届けられます。「家では見せない表情を見られた」と感謝されることも多く、介護施設への信頼感の向上につながります。ICTツールなどを活用して、手軽に共有できる仕組みを整えることは、ご家族の満足度を高めることができる手段となります。

変化を読み取り次回の企画をブラッシュアップする

記録は書いて終わりではなく、振り返って活用することで新たな価値が生まれます。「前回はこのゲームで集中力が続かなかったから、次は時間を短くしよう」「Aさんは音楽レクの時に表情が良くなる」といった記録や情報の蓄積は、ケアの質を高めるための貴重な資産となります。


介護現場におけるレクリエーションは、身体機能の維持や認知症予防、そして何よりご利用者の生きがいを創る大切な「ケア」の一つです。 本記事では、すぐに実践できる具体的なレクリエーションから、企画・進行のコツ、安全管理のポイントまでを解説しました。
準備や運営には苦労も伴いますが、ご利用者の「できた!」「楽しかった!」という笑顔は、スタッフにとっても大きなやりがいになるはずです。

また、「ケアコラボ」ではレクリエーション時の文章では伝えきれない表情や臨場感を、写真や動画でかんたんに残したり、その記録をご家族にも共有したりすることができます。
「スタッフ間で情報共有をスムーズにしたい」「家族との関係を深めたい」といったお悩みがある方は、ぜひ一度お問合せをいただけると幸いです。

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佐藤 ありさ

佐藤 ありさ

福祉系の専門学校を卒業後、介護福祉士として勤務。その後新規事業開発の仕事を経験。「これまでの経験を活かして、福祉の現場で働く方々を支援したい」 そんな想いから、2022年にケアコラボへ入社しました。 「こんなケアを実現したい」という想いを持つ一人でも多くの方に「ケアコラボ」を届け、その実現の一助となれたら嬉しいです。

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