シリーズケアコラボの視点
ICF(国際生活機能分類)とは?わかりやすく解説!介護現場での活用メリットと事例
こんにちは!多職種連携をスムーズにし、ご利用者お一人おひとりの「その人らしさ」に寄り添うケア記録ソフト「ケアコラボ」を提供する、ケアコラボ株式会社の佐藤です。
ICF(国際生活機能分類)という言葉を耳にしたことはあっても、日々の業務で具体的にどう活用すべきか悩む方は多いのではないでしょうか。
ICFとは、2001年にWHOが採択した、人間の「生きることの全体像」を示す、世界共通の「共通言語」です。・・と、さまざまな文書に書かれているのですが、少し変な日本語かなとも思いました。もともと英語の文章から日本語に翻訳されているからでしょうか。「その人の『生活』や『人生』の全体像を理解するために、世界で使われている共通の物差し」とするとより理解しやすいかなと思います。
障がいのある方だけでなく、すべての人を対象とするこのICFの視点は、介護・福祉現場における質の高いケアに欠かせません。
本記事では、ICFとは?から、ICFの目的や構成要素、メリットやよくある質問までを分かりやすく解説します。多職種連携を深め、ご利用者一人ひとりの「その人らしい人生」を支えるヒントとして、ぜひお役立てください。
ICF(国際生活機能分類)とは?意味や目的を簡単にわかりやすく解説
WHOおよび厚生労働省が定義するICFの基本
ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)とは、2001年5月にWHO総会で採択された「健康の構成要素に関する分類」です。かつての障がい分類とは異なり、新しい健康観を提起するものとして位置づけられています。
最大の特徴は、生活機能上の問題は誰にでも起こりうるという考えに基づき、特定の障害者だけでなく「すべての人に関する分類」であるという点です。
ICFの目的と介護・福祉現場で重視される理由
ICFの目的は、「生きることの全体像」を示す「共通言語」であることです。冒頭でもお伝えした、「その人の『生活』や『人生』の全体像を理解するために、世界で使われている共通の物差し」とすると理解しやすいかと思います。さまざまな職種や立場の人たちが関わる介護・福祉の現場では、各専門分野や異なる立場の人たちの共通の理解を持っておくことが大切です。
ICFを用いることで「活動」や「参加」といったご利用者の人生に直結する視点を欠かさず、サービスの効果を客観的に評価できる体制が整います。
★参考
ICT(国際機能分類)-「生きることの全体像」についての「共通言語」-(厚生労働省)
ICFとICIDH(国際障害分類)の違いとは?考え方の変化を解説
ICIDHが抱えていた課題とマイナスの視点
1980年に発表されたICIDH(国際障害分類)は、障がいを「疾病の帰結(結果)」として捉える分類でした。このモデルは、疾患から機能障害、社会的不利へと至るマイナス面のみに注目していたため、障がいの原因を病気だけに求めてしまうという問題点がありました。また、生活機能に大きな影響を与える「環境」の要素が考慮されておらず、社会的不利の分類自体も不備が多いものでした。

「障がい」から「生活機能」へ:ICFとICIDHの違い
ICIDHが「障がい」というマイナス面だけに着目していたのに対し、ICFは健康を構成する「生活機能」というプラス面を前提とし、その一部として生じた問題を捉えるという考え方です。
単にマイナス(課題・問題)を解消することに主眼を置くのではなく、プラス(ご本人のできること・したいこと)といった肯定的な側面を最大化させるという、大きな発想の転換を意味しています。
| 比較項目 | ICIDH(国際障害分類) | ICF(国際生活機能分類) |
| 基本的視点 | 疾病の帰結(結果) | 健康の構成要素 |
| 中心概念 | マイナス面(障がい) | プラス面(生活機能) |
| モデル | 一方向的な医学モデル | 双方向の相互作用モデル |
| 環境の扱い | 考慮されない | 背景因子として重視 |

ICFを構成する要素
健康状態
ICFにおける「健康状態」は、ICIDHでは疾患や外傷に限られていたのと異なり、妊娠、加齢、ストレス状態など、生活機能に影響を及ぼす状況を含む広い概念となりました。これらの健康状態は、単独で生活機能を決めるのではなく、他の要素と双方向に影響を与え合うという考え方です。
加齢や妊娠を生活機能に変化を起こしうる一つの要素として捉えることで、障がいのある方だけではない「すべての人」を対象とした分析が可能になります。
生活機能
生活機能はICFの中心概念であり、以下の3つのレベル(階層)を包括した概念です 。
- 心身機能・身体構造(生命レベル):生命の維持に直接関係する身体・精神の機能や構造。
- 活動(個人レベル):生活行為(生活上の目的をもち、一連の動作からなる行為)。
- 参加(社会レベル):家庭や社会に関与し役割を果たすこと。
これら3つのレベルは互いに影響を与え合い(相互依存性)、同時に他からの影響だけでは決まらない独自の性質(相対的独立性)を持っています 。
心身機能・構造
心身機能とは、身体系および精神の生理的機能を指し、手足の動きや視覚・聴覚、内臓の働きなどが含まれます。身体構造とは、手足の一部や心臓の一部などの、体そのものの部分を指します。
活動
活動とは、生活レベルにおける具体的な「生活行為」を指します。歩行などのADL(日常生活行為)だけでなく、調理・掃除などの家事、職業上の行為、趣味やスポーツ、社会生活に必要なすべての行為が含まれます。ICFでは「活動」を以下の2つの面で捉えます 。
- している活動(実行状況): 現在の実生活で実行している状況。介護現場においては、見守りや介助を受けながらも実行している場合を含む。
- できる活動(能力):訓練や評価の場面で発揮できる潜在的な状況。
参加
参加は、家庭や社会に関与したり、役割を果たしたりすることを指します。働くことや地域組織での役割だけでなく、主婦や親としての家庭内役割、趣味の会への参加、政治的・宗教的な集まりへの参加など、非常に広い範囲を含みます。
背景因子
背景因子は、生活機能そのものではありませんが、生活機能に大きなプラスまたはマイナスの影響を与える要素です 。
環境因子
環境因子は、建物、道路、自然環境といった「物的環境」だけではありません。家族や仕事仲間などの「人的環境」、社会の態度や意識、そして医療・福祉・介護などの「制度的環境」まで広く含みます。生活機能にプラスの影響を与える場合は「促進因子」、マイナスの影響を与える場合は「阻害因子」と呼ばれます。
個人因子
個人因子は、年齢、性別、性格、価値観、ライフスタイルなど、その人固有の「個性」に近い特徴を指します。これらは一人ひとり異なるものであり、介護・福祉現場においてご利用者の個性を尊重するために極めて重要な項目です。
【ICFモデルにおける構成要素の定義】
| 健康状態 | 病気、疾病、失調、障がいなど |
| 心身機能 | 身体の動きや心の動き |
| 機能障害・構造障害 | 心身機能または身体構造上の問題 例)麻痺、認知症、腎不全、指の欠損など |
| 身体構造 | 身体の一部の構成(器官・肢体など) |
| 活動 | 個人が生きていくうえで行う生活行為 |
| 活動制限 | 個人が活動を行うときに生じる難しさ |
| 参加 | 社会的な出来事に関与したり、役割を果たしたりすること |
| 参加成約 | 何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさ |
| 環境因子 | 生活するなかでの物的環境や人的環境、社会的環境 例)住環境、家族、地域資源、行政サービスなど |
| 個人因子 | 個人の人生や生活の背景、特徴例)性別、年齢、性格、価値観、趣味、嗜好、職業など |
ICFにみる相互関連性と具体例
脳梗塞を発症したケースにみる相互関連の例(悪循環)
以下の図では、脳梗塞を発症したケースを想定し、生活機能低下の悪循環を示しています。
脳梗塞後遺症により左半身麻痺があり、歩行障害が生じている場合、日常生活での活動制限をきたして外出等の機会も減少してしまうといった右方向の悪循環が生じます。また、社会参加の機会が減少することで、日常生活での活動性が低下するとともに、筋力低下が進行したり関節が拘縮するといった心身機能の低下をきたすなど、左方向の悪循環も生じます。

適切なケアによる生活機能の向上例(良循環)
以下の図は、生活機能の改善(良循環)をもたらすためのアプローチ方法や支援の方向性を整理したものです。見てわかる通り、日々の介護を単なる「作業」として提供するのではなく、身体・心理・社会的な側面から多角的にアプローチし、ご利用者にあわせて柔軟に対応する個別性が求められます。
ICFが相互作用モデルと呼ばれることからもわかるように、人間の生活機能は悪化にも改善にも多様に変化する可能性があります。ケアの内容や目標を考える際に積極的にICFの視点を活用することで、個別的かつ質の高いケアを提供できるようになります。

介護現場でのICFコードと評価点の見方・書き方
ICFコードの基本構造(b・s・d・e)とアルファベットの意味
ICFは、人間の生活機能と障害の状態をアルファベットと数字を組み合わせて表現します 。約1,500もの分類項目がありますが、頭文字のアルファベットを見ることで、その情報がどの領域に関するものかを即座に判別できます。
| アルファベット | 構成要素の名称 | 具体的な内容の例 |
| b (body functions) | 心身機能 | 精神機能、視覚・聴覚、筋力、睡眠など |
| s (body structures) | 身体構造 | 脳の構造、目や耳の構造、肢体の構造など |
| d (activities & participation) | 活動と参加 | 歩行、セルフケア、家事、仕事、地域活動など |
| e (environmental factors) | 環境因子 | 福祉用具、家族、サービス、建物、制度など |
アルファベットの後の数字は、1桁目が「章番号」、それ以降の桁がより詳細なカテゴリーを示しており、桁数が多いほど具体的な状況を表します 。
評価点を用いた「能力」と「実行状況」の数値化
ICFのコードは、末尾に「評価点」と呼ばれる数字を付けることで、初めて「どの程度の問題があるか」という具体的な意味を持ちます 。評価点は共通のスケール(0〜4)を用いて量的に示されます 。
- 0(問題なし): 0~4%の範囲で、無視できる程度の問題
- 1(軽度の問題): 5~24%の範囲で、わずかな問題
- 2(中等度の問題): 25~49%の範囲で、かなりの問題
- 3(重度の問題): 50~95%の範囲で、極度の問題
- 4(完全な問題): 96~100%の範囲で、全く遂行できない状態
特に重要なのが「活動と参加(d)」の評価です。現在の環境で実際に行っている状況を示す「実行状況」と、介助や道具なしで本人が持っている力を示す「能力」の2つをセットで評価します。この2つの数値に差がある場合、福祉用具の導入や環境調整によって、生活がさらに改善する可能性が高いことを示唆しています。
★参考
「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(厚生労働省)
ICFを活用するメリット
「強み(ストレングス)」を活かしたケアプラン作成
ICFはプラス面を重視し、マイナス面をもその中に位置づけて捉えます。この視点を持つことで、疾患や障がいがあってもご利用者が持っている「能力」や「意欲」、あるいは良好な「環境」といった強み(ストレングス)に着目したプランを作成できます。
このマイナス面だけではなく、プラス面をとらえる視点を「ストレングスモデル(strength model)」と言います。ご利用者のストレングスは個人のなかにある内的資源だけではなく、ご利用者を支えている外的資源の両面があります。
環境調整によって「できること」を増やす
環境因子の「促進因子」と「阻害因子」という考え方は、自立支援に極めて有効です。ご本人の機能を回復させることが困難な場合でも、環境(建物、人的支援、福祉用具など)を調整することで「活動」のレベルを向上させることが可能です。例えば、歩行が困難であっても杖や装具(環境因子)を活用することで移動能力を高め、復職(参加)を実現できるケースは多くあります。
ご利用者本人や家族の意向を反映した目標設定
ICFは専門職の判断だけでなく、ご利用者本人の「生活(活動)」や「人生(参加)」が良くなることを最終的な成果として評価します。個人の価値観やこれまでの生活・人生(個人因子)を目標に取り入れることで、ご本人が「これからの暮らしを自分の意思で納得して選ぶ」ことができる環境が整い、満足度の高い、個別ケアが実現できます。
ICFに関するよくある質問(Q&A)
Q. ICFとは結局どのようなものですか?
A. ICFは、WHOが採択した、人間の「生きることの全体像」を記述するための世界共通の物差しです。病気や障害というマイナスの側面だけでなく、その人が日々どのような生活を送り、社会の中でどのような役割を果たしているか、そして周囲の環境がどう影響しているかを包括的に捉えるための枠組みです。
Q.ICIDH(国際障害分類)とは何が違うのですか?
A. 最大の違いは、視点が「マイナス」から「プラス」へ転換したことです。ICIDHが「障がい」というマイナス面に焦点を当てていたのに対し、ICFは「生活機能」というプラス面に着目しています。
Q. ICFの「生活機能」に含まれる3つのレベルを教えてください。
A. 生活機能は、以下の3つの階層で構成されています。
- 心身機能・身体構造: 身体の生理的機能(精神機能を含む)や、身体の構造そのものの状態を指す「生命レベル」の視点です。
- 活動: 掃除や料理、歩行、趣味の動作など、個人が日常生活で行う具体的な行為を指す「生活レベル」の視点です。
- 参加: 仕事や家庭内での役割、地域活動への関与など、社会的な立場や役割を果たす「人生レベル」の視点です。
Q. 「環境因子」には具体的にどのようなものが含まれますか?
A. 建物や道路などの物理的環境だけでなく、家族や仲間の支援といった「人的環境」、社会の偏見や意識などの「態度的環境」、さらには介護保険や福祉サービスといった「制度的環境」まで幅広く含まれます。これらの環境が生活機能を助ける場合は「促進因子」、妨げる場合は「阻害因子」と呼ばれます。
Q. 分類項目にない「個人因子」は、評価しなくて良いのでしょうか?
A. 分類(コード化)はされていませんが、アセスメントにおいて非常に重要な要素です 。個人因子には、年齢、性別、価値観、ライフスタイル、これまでの職歴や人生経験などが含まれます。これらは「その人らしさ(個性)」そのものであり、個別ケアに大きな影響を与えるため、ICFのモデル図には不可欠な要素として配置されています。
Q. ICFコードのアルファベットは何を意味していますか?
A. 4つの主要な構成要素を英語の頭文字で表しています 。
- b: 心身機能 (body functions)
- s: 身体構造 (body structures)
- d: 活動と参加 (activities and participation)
- e: 環境因子 (environmental factors)
これに数字を組み合わせることで、特定の状態を世界共通の記号で記述できます。
まとめ
ICFの重要ポイント:生活機能を包括的に捉える
ICFは、病気や障害という側面だけでなく、環境因子や個人因子を含めた「生きることの全体像」を捉えるための物差しです。心身機能、活動、参加という3つのレベルを偏りなく見ること、そしてそれらの相互作用をプラスの視点で捉えることが質の高いケアの根底にあります。単なる評価ツールとしてではなく、ご本人が「自分らしい人生」を送るための指標として活用することこそが、今の介護・福祉現場に求められています。
「ケアコラボ」なら多職種間のリアルタイムな情報共有が簡単に
ICFが目指す「専門職種間での共通理解」をデジタルで実現するのが、私たちの提供する記録ソフト「ケアコラボ」です。介護職が現場で気づいた何気ない「活動」の変化や、リハビリ職が評価した「能力」の向上を、リアルタイムで共有できます。職種の壁を超えて一人の生活を多角的に見守ることで、情報の抜け漏れを防ぎ、一貫したケアを提供することが可能になります。

「人生録」で、その人らしさをご家族と共にまとめる
ICFにおいて、年齢や職業歴、価値観、ライフスタイルといった「個人因子」は、その人の「個性」そのものでありながら、客観的な分類が最も難しい項目でもあります。
ケアコラボの「人生録」という機能は、この大切な個人因子をしっかりと把握するための機能です。ご家族と共に、これまでの歩みや大切にしてきた生活習慣、価値観といった「人生の背景」を丁寧に可視化し、残すことができます。
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