事例から学び慎重に判断した記録システムの導入。記録の“家族共有”によって生まれたポジティブな変化

ケアコラボはすべての事業所で利用中。職員数はグループ全体で約200名以上。
- 非効率な紙での記録
- 事業所ごとに記録方法が統一されていなかった
- リアルタイムでの指示指導ができなかった
- スマホを使っていつでも記録
- 記録の目的をご家族に共有するために統一
- 記録にコメントすることでリアルタイムの指示指導
紙ベースの記録方法に課題を抱えつつ、当たり前になっていた
― ケアコラボ導入前の記録について教えてください。
もともとは紙で記録をしていました。そのため、1日30分から1時間ほど記録の時間を確保する必要がありました。
また、同じ数字を何度も紙に転記するなど、今考えると無駄な作業も多く発生していたように思います。見返すことがほぼない紙の保管や、保管期間をすぎて不要になった資料をシュレッダーにかけるなどの手間もかかっていました。
社内では10年以上前から「紙をいつまで使うのか」という話題が上がっていました。紙の使用を見直すべきだと感じていたスタッフもいたかもしれませんが、「これが当たり前」という空気感もあり、なかなか記録システムの導入には至りませんでした。
― その他に抱えていた課題はありましたか?
記録の取り方について、事業所ごとに勉強会を開くなどしていましたが、アナログな方法で記入する以上、フォーマットが統一されにくいという課題がありました。
例えば、お風呂の介助をした際には、1人につき1回必ず記録をつける、または2行のコメントを記入するなど、紙ベースならではの各事業所によるローカルルールが存在していました。そんな中、こうした記録方法が本当に適切なのか、ずっと疑問を感じていました。
さらに、紙での記録はリアルタイムで確認や指導ができないといったデメリットもありました。
― ケアコラボを初めて知った時の印象はどのようなものでしたか?
スマートフォンを記録に使うということが、私たちにとっては衝撃的でした。極端に言うと歩きながら記録できる点が画期的です。
当社の社長があるセミナーに参加した際に、ケアコラボについての情報を得て、「こんなよさそうなものがある」と社内に共有したことが、私たちがケアコラボを知ったきっかけでした。
その後、2018年10月開催の業界向け商談型展示会「ケアテックス大阪」に出展していることを知り、ブースを訪問しました。
その際にケアコラボの担当者と話をする中で、彼らの情熱や信頼感のある姿勢に心を打たれて、この商品なら成功するという確信を持ち導入を決めました。
― 他社の記録ソフトも検討されましたか?
大手を含めた他のソフトも検討しましたが、2つの理由で導入には至りませんでした。
まずはコスト面です。導入時にかかる数百万円の初期費用や運用、更新にかかる費用の負担が大きいと感じました。
もう1つの理由は、大きなアップデートがなかったことです。ケアコラボは、当時から現在に至るまで頻繁にアップデートされていて、その進化のスピードと価格のバランスのよさに好感を持っています。費用も手頃で、むしろ安いと感じるほどです。
また、月額費用を支払うスタイルで、途中解約しても解約金がかからない点も魅力でした。さらに、担当者が「もし合わなければ解約しても構わない」と言ってくれたことも、導入の後押しになりました。

成功・失敗事例から学び、慎重に進めた導入の検討
― ケアテックス大阪でお会いしてから、2回目の面談まで9ヶ月間、どのように検討を進めていましたか?
導入を確実に成功させるために、比較検討の時間をしっかり確保しました。いくつかのシステムを比較し、最適な方法を模索する中で、県外の事業所へ見学にも行き、成功・失敗事例を学びました。
ケアコラボ導入に関してコスト面でのハードルが高くはなかったものの、いざ導入して「やっぱり合わなかった」という事態は避けたかったんです。
「合わなければ変えればいい」という考え方もありますが、当時の私は何としても成功させたいという強い想いがありました。
すべての事業所が一斉に導入へ前向きだったわけではなく、「本当に大丈夫なのか?」という不安も導入へのネックになっていました。それを払拭するためにもこの準備期間は必要だったと感じています。
― 2回目の面談から2ヶ月後の2019年9月には導入を決断されましたが、決め手は何だったのでしょうか?
ケアコラボの担当者と相談し、まずは導入しやすい三日市の事業所で試験導入を行いました。ここで成功事例を作ることができたことで、自信を持って他の事業所への導入を検討できるようになりました。
そして、2回目の面談から2ヶ月後の2019年9月に正式に導入を決定し、スマホを追加で購入するなど本格的に運用を進めていきました。
― 成功・失敗事例を見る中で何か気づいたことはありましたか?
成功例に関しては、すでに自分たちの中でイメージができていたため、それを確認する目的で見学にうかがいました。一方で、慎重に考えるべき点も同時に見えてきました。
それは、ご家族への情報公開に関することです。ある事業所では、ご家族からの過度な要望につながるケースがあったとお聞きしました。もちろんごくまれな事例ですが、このような可能性があることを事前に知ることができました。家族公開は当初から検討していましたが、リスクについても実感する機会になりました。
それ以外の部分はほとんどイメージ通りでした。バイタルや食事、排泄の記録、タイムラインなど、一通り試しましたがすべてを把握するのにそれほど時間はかからず、かなりスピーディーに導入が進みました。
― 失敗例を見て、思ったことを率直に教えてください。
また別のある事業所では、トップの方が導入したいという強い思いを持ってスモールスタートで始めたものの、現場にはうまく浸透せず、最終的に導入が進まなかったケースがありました。印象的だったのは、その方の前向きな想いが現場に十分に伝わっていなかったことです。この経験から、導入を決めたら、トップが強い意志を持ち、「何が何でもやるぞ」という姿勢を示すことが大切だと強く実感しました。
実際に動いてくれている現場の方の声も大切ですので、期間を区切ってみんながコミットし、このまま使うかどうかを検討できるといいのではないかと思います。

記録方法の改善により、ご利用者とのコミュニケーションが円滑に
― 現場に浸透させていく中で大変だったことはありますか?
初めはそれぞれの事業所によって導入に対して温度差があったので、どのようにしてそれを落とし込んでいくかは少し時間がかかる部分だという印象がありました。当時、紙の記録をスマホに変えることに抵抗を感じるスタッフは少なくありませんでした。明確な反対意見があったわけではなく、単に「現状を変えること」への強い抵抗感があったのです。
こうしたアレルギー反応は多くの事業所で見られましたが、ケアコラボの認知度が所内で高まるにつれ、少し時間をかければ導入できるのではないかという期待感に変わっていきました。「これ楽やん」というのに気づく人が増えると一気に浸透が進んで、今更乗らないという選択肢はないという空気感に変わりました。
― ケアコラボを導入して、記録方法にどのような変化がありましたか?
記録作業の効率が大幅に向上しました。以前は記録を取るためにわざわざ事務所に戻らなければなりませんでしたが、現在はその場でスマホを使って入力できるようになり、業務が非常にスムーズになりました。
ご利用者の話にスタッフが相槌を打ちながら記録を続けることができるようになり、現場ではスタッフがご利用者の横に座りながら記録を取るシーンが増えました。
― ご利用者とのコミュニケーションにも変化があったのですね。
はい、そうですね。もちろん顔を見て話すことが理想ですが、側にいて軽く相槌を打ちながら会話をすることが求められるシーンも多々あります。今では、こまめに記録を取りつつ自然なコミュニケーションを保ちながら業務を効率化できるようになりました。
また、タブレットやスマホの導入によって、ご利用者がこれらの端末に興味を持つようになったのも変化のひとつです。記録ツールとしてだけでなく、例えばYouTubeで気になる動画を一緒に視聴するなど、新しい楽しみ方が生まれました。
ケアコラボの導入により、記録業務の負担が軽減されただけでなく、職員とご利用者との関係にも好影響がありました。このような変化も、ケアコラボを活用する魅力の一つだと実感しています。

情報の透明性向上でご家族からのクレーム減少
― 記録の質に関しては、どのように感じていますか?
ケアコラボを導入したことで、記録をリアルタイムで入力できるようになり、管理者が職員の記録内容を迅速に把握できるようになりました。これにより、安心感が生まれています。
また、記録をご家族に公開している事業所では、初めは「第三者が読む」という意識を持つことが難しい職員もおり、逆に意識しすぎて記録の記入自体が減少するという課題もありました。そこで、いい記録を残した職員に対してポジティブなフィードバックを送るボタンを活用し、記録の質を高める工夫をしました。
さらに、記録を入力する際には前日の申し送り内容を確認しながら、不適切な表現や改善点があれば、役職者が直接アドバイスを行うようにしています。このようなフィードバックを繰り返すことで、記録の質が向上し、より正確で有益な情報が残せるようになりました。
― 確かに、第三者が見ているかもしれない状況は刺激になるかもしれませんね。
その通りで、「第三者が読むかもしれない」と意識することで、記録がよりわかりやすく、適切に表現されるようになります。
また、文章での伝達が難しい場合には、状況を写真で記録することもあります。これにより、事業所内での記録だけでなく、ご家族向けにも状況をわかりやすく伝えることができ、対象に応じて記録の内容を使い分けることが可能です。
― 記録の家族公開に踏み切ったきっかけとご家族の反応を教えてください。
最初は戸惑いもありましたが、特にコロナ禍で面会が制限される中、利用者のご家族から「うちの家族は大丈夫ですか?」といった問い合わせが多く届くようになりました。そこで、家族公開に踏み切った結果、大正解でした。事業所からご家族にリアルタイムで記録が共有されているため、翌日にお話しする機会があっても冷静に話を進めやすく、誤解やクレームが減少しました。
それまでは、熱が出たり転倒したりといったネガティブな出来事があった時のみ、ご家族に連絡することが多く、それ以外の情報を伝える機会は少なかったのですが、現在ではいいことも悪いこともリアルタイムで共有されています。この透明性の向上が、ご家族との信頼関係を深めることにつながっています。
“家族共有”によりスタッフのモチベーションが向上
― 家族公開を進めたことで現場にどのような変化がありましたか?
家族公開が進む中で、スタッフ全員が積極的にケアコラボを活用するようになりました。そのきっかけは、ご家族から感謝の声が増えたことです。スタッフは普段、大変な業務を当たり前のようにこなしていますが、利用者のご家族からその対応について「ありがとうございます」と感謝されることが増え、彼らは「こんなことで感謝されるとは思っていなかった」と驚きました。
自分たちの仕事がこんなにも感謝されていることに気づき、モチベーションが高まった結果、職員の記録が圧倒的に増加し、特に夜勤者の記録は目に見えて増えました。感謝の言葉をもらうことで、スタッフは「より安心してもらいたい」という気持ちが強くなり、記録が増えるという好循環が生まれました。記録が増えることで、より多くの状況を観察し、見守る時間が増え、それが事故の減少と、より安全な環境の整備につながっています。
家族公開を始めてからの1年間のデータを取ったところ、その効果が確実に現れました。家族公開は、「家族共有」といった感じで、双方向にいい結果を生んでいます。
― ポジティブな変化が多くあった一方で感じた課題などはありますか?
まず、ご家族にスタッフの名前を覚えていただく機会が増えたことは良い変化ですが、名前や顔を公開することにはリスク管理の観点から慎重な対応が必要だと感じています。
また、最近では入居者の家族公開登録を進めることが増えましたが、特に入居当初は本人やご家族に不安が大きいことが多く、最初の1ヶ月間は特に効果が現れる傾向があります。登録の際には、必ず「これは介護記録の共有ツールであり、伝言板ではない」という点をしっかりと説明しています。ただ、時にはその目的を誤解し、質問形式でコメントをされ、その返答を過剰に求めるなど、行動がエスカレートすることもあります。こうした問題を防ぐために、丁寧な説明を心掛けています。
― 2022年には企業向けのビジネスチャットツールであるLINE WORKSとの連携をしていただいていますね。
家族からのコメントの通知を受け取りたくて使用していました。管理者のライフワークバランスを保つという点では、いつでも通知が見れてしまうという問題もあります。
そのほかに、普段は勤怠ツールやチャット式の連絡ツール、インカムやカメラなど様々なツールを使っています。トライアンドエラーを繰り返しながら導入している最中ですが、スタッフからの拒否反応は出にくくなったと感じています。
最近では、オンラインの研修システムを使って、ケアコラボの使い方を共有していて、スタッフに好評です。各々のタイミングで動画視聴し、テストをして理解度を確認するオペレーションです。
施設内で行われているイベントのライブ配信録画のリンクを、家族の皆さんに共有したり、職員会議の録画をスタッフに共有したりするときにも、ケアコラボにURLを添付して使っています。

経営指針の一つとして、全事業所でケアコラボを活用を目指す
― これから導入を検討をされている方にアドバイスはありますでしょうか?
導入に関して不安に感じる点は正直に伝えることが大切です。ケアコラボの担当者は、その不安や課題に対して具体的な解決策を提案しサポートしてくれるので、安心して利用できます。私も何度も助けてもらいました。また、リモートで迅速に対応してもらえる点も非常にありがたいです。
新しいことに挑戦するとき、不安はつきものですが、しっかり取り組めば必ず結果は出ますし、新しい発見や学びに出会えます。「踏み出せばその一足がみちとなり、その一足が道となる。 迷わず行けよ、行けばわかるさ。」ですね。
事業所の運営に置いて、時代の流れに沿って便利なものを活用することが大切だと思っています。
― 今後ケアコラボを使っていく展望や、ケアコラボ社に対するご意見があれば教えてください。
会社の方針として、今年度中には全事業所でケアコラボを活用した家族公開や記録の共有を実現する予定です。これは経営指針の一つとして重要な取り組みと捉えています。
営業戦略においても、ケアコラボを活用したいと考えています。最近、ホームページのリニューアルを進め、ブログの開始を予定していますが、ご家族の許可がない限り事業所での日常を前面に押し出すことが難しいと感じています。
そこで、PRに使える写真などのサンプル素材を提供いただけると助かります。ケアコラボを使用していることがご家族にも魅力的に映り、中長期的な集客にもつながると感じているからです。現在は口コミで広がっているサービスのようですが、今後はケアコラボと一緒により大々的に発信していきたいと考えていますので引き続きよろしくお願いします。
さらに、[人生録]の機能も今後積極的に活用していきたいと考えています。この機能は、利用者の歩んだ人生を年代ごとに記入できるもので、利用したいご家族が限られるかもしれませんが活用を前向きに検討するほど注目しています。