ケアコラボでの情報共有によりご利用者の自宅時間がより良いものへ変化
加齢や病気などをきっかけに自立した生活が困難になった方が、気軽に足を運べる場所として地域に密着した活動を続けている。1日のご利用者は最大で18名、スタッフは約10名。
- 紙の記録ではご家族とリアルタイムの共有ができなかった
- 記録用紙のメモをパソコンに転記する時間がかかっていた
- 文字だけの記録では詳細を伝えることがむずかしかった
- ケアコラボの「ご家族機能」を使い、リアルタイムでご家族に情報共有
- 写真付きの記録で症状などを詳細に伝えれるようになった
- スマホからの記録は場所を選ばず、個人ごとに同時に接続できるように
家族との情報共有と紙での記録方法が課題だった
― デイサービスくらすばで大切にしていることを教えてください。
くらすばのご利用者が、現在の身体状況や認知機能の状態でも楽しく過ごせるような方法を一緒に探しています。
例えば運動機能や認知機能が落ちてくると、今まで出来ていたことが、一人だけで完結させることができなくなったり、必要以上に時間がかかってしまうことが増えてきます。
そうすると、ご家族から「危ないからご飯は作らないで欲しい」「掃除もひとりでやらないで欲しい」というご意見をいただくこともあります。
しかし当施設では、ご本人の能力に合わせてやり方を工夫すれば安全にできるという提案をし、ご自身の意欲低下、作業の遂行能力低下などを防止しています。
今まで当たり前にやってきたことが家ではできなくても、くらすばに来れば一緒にできるということを大切にしています。
― ケアコラボの導入はいつから検討されていましたか?
記録を共有でき、ご家族とのつながりを作るきっかけにもなるツールだということは、設立の準備段階で代表の橋本から聞いていました。
私が以前通所リハビリテーションで働いていた時は、活動記録などを紙に印刷してご家族に渡していました。
ですが、一人暮らしだったりご家族が遠方に住んでいたりと直接話せないことも多かったので、ご家族とタイムリーに情報のやり取りができれば、ご利用者にもっといい過ごし方をしてもらえるのではないかとずっと感じていました。
ケアコラボの導入を聞いた時には、ぜひ活用してご家族とのやり取りを強化したいと思いましたね。
― ご家族との情報共有に課題を感じていたんですね。それ以外に解決したい問題はありましたか?
まず紙に書く記録方法は時間がかかるということですね。
以前勤めていたところでは一時的に記録を紙に書いておき、食事の写真などと一緒にスタッフが1時間近くかけてパソコンで入力し印刷をしていました。
パソコンを使うのが苦手な人も多いので時間が余計にかかってしまい、もっと効率よくできないかと感じていました。
― 入力中でも、何かあれば現場に戻って作業を中断しなくてはいけないので大変ですよね。
紙だと過去の記録を確認しにくいということに加え、情報伝達にタイムラグがあるのも課題でした。
例えば月曜日と金曜日の週2回利用する方の場合、月曜日にご家族からコメントいただいたものを金曜日に返していたので、かなり時間があいてしまいます。
またご家族には写真を共有できなかったので、情報を伝える際の伝わりにくさもありました。
送迎スタッフがご家族に、ご利用者の皮膚の状態などを言葉で説明するのはなかなか難しく…
ご家族からすると「なぜ事業所のことなのに把握してくれていないのだろう」と、ちょっとした不信感にもつながってしまいます。
― それは他の方からもよく聞くお話ですね。ケアコラボあるあるを作るとしたら上位に入るエピソードです。
ケアコラボ導入時は他のソフトとの使い分けなど運用面で悩みが
― ケアコラボの導入時の課題はありましたか?
請求システムとケアコラボをどう使い分けるかが課題でした。
他社のソフトでも記録はできますが、スマホで見られないのが不便で、ケアコラボでどこからどこまでを記録するかすごく悩みましたね。
― 具体的にどこで悩んでいましたか?
例えば請求システムに、お風呂に入った実績だけを記録するか、時間や様子など細かいことも記録するのか…ですね。
なるべく情報にダブりがないように運用したかったので、実績と記録の切り分けに悩んでいました。
現在は請求システムは実績のみ入力し、実際の様子などの記録はケアコラボに入力しています。
― スマホで利用できることに評価いただいていると思いますが、実際に使ってみてどうですか?
スタッフによってかなりばらつきがありますね。
ケアコラボを使うとなった時に、使い慣れているスタッフが入念に伝えていかないと、機能を使い切れない、使いこなせないというのは今でも出てくる問題ではあります。
試行錯誤しながら活用方法を改善
― 導入時に活用方法を模索された印象ですが、具体的にどういった工夫をされましたか?
情報共有の質にこだわりを持って導入を進めました。
ケアコラボは記録をそのままご家族に共有できるので、ご家族との情報共有はそこまで課題として感じたことはありませんでした。
一方でスタッフが記録をさかのぼる、緊急性が高い内容に関しての記録方法といった点には課題を感じていました。
当初は申し送り機能を使っていましたが、操作方法が変わると使いづらいのでタイムラインに統一しています。
1日の中で十数人のご利用者の記録が大量に記入されるので、緊急性が高い記録をどうやって見落とさないようにするかが悩みでした。
ご利用者のタイムラインをひとりひとり見ていると時間がかかりますし、チームタイムラインだと色々な情報が出てくるので見逃しが多くなってしまったんです。
試行錯誤した結果、朝のミーティングという限られた時間の中で効率よく情報共有するには、重要な記録としてチェックを付けたものを読み合わせるのが最適だと感じています。
その時の工夫として、直近1ヶ月の記録に絞り込んでいます。そうすることで継続的な介入が必要でも、確認漏れがなくなるようになりましたね。
― 緊急性の高い情報共有はどのようにされていますか?
情報共有する時にまずは緊急性を意識していて、すぐに対応が必要になるかどうかで使い分けをしています。
緊急性が高いものに関しては基本的に「 LINE WORKS(ラインワークス)」で伝えるといった使い分けをしていますね。
― 試行錯誤をしていただいて今のスタイルに落ち着いたんですね。前職の紙で書いてた時と、今のケアコラボを使った申し送りの質の違いは感じますか?
写真がつけられるのでどんな状態か具体的に分かりやすくなり、圧倒的に質が上がっていると思います。大幅に改善しましたね。
もう一つは情報がいつでも確認できるのが強みだと思っています。
台数に限りのあるパソコンでしか見られないと一部のスタッフしか利用ができません。
今は自分のスマホでいつでも記録がつけられ、見たい時に見られるのが大きいですね。
今日の仕事ではここに気をつけようというのが、あらかじめ共有や各自で確認ができるので、働く上で心にゆとりができたと感じています。
ご利用者の家での過ごし方が変わるきっかけとなった「家族公開機能」
― 「家族公開機能」をかなり活用してくださっていますが、使うことによって良かったエピソードはありますか?ご利用者の日々の様子がご家族へ伝わりやすいですね。
ご家族からは家では見せない姿を文や写真で見せてくれるので本当に良かったというコメントをいただきます。
普段家で過ごしていても、ご利用者とご家族が一緒に作業することはあまりないと思います。
なのでスタッフとご利用者との細かいやりとりや、他のご利用者と楽しく過ごした様子などを文章でなるべくリアルに伝わるようにスタッフが工夫し、それにプラスして写真をつけて共有しています。
― ご家族からの事業所自体の評価も上がって、 スタッフの皆さんもポジティブになれますね。他にもそういったエピソードはありますか?
くらすばでの1日は一緒にご飯を作る時間の比重が一番大きく、2時間かけてみんなで作業しています。
それをいつも楽しみにしてくださっているあるご利用者は、腰痛のため自宅では活発に過ごしてはいなかったそうなんですが、ご飯が美味しかったのでまた作りたいと言ってくださって、実際に家でも作ったと聞きました。
くらすばだけでなく家でご利用者自身の活動が増える、意欲的に活動してくれるようになったというのがとても嬉しい出来事でしたね。
ご家族へ共有している写真があるのでご利用者が何を食べたのかうまく説明できなくても、ご家族が「これ食べたんだね」と確認できるからこそのエピソードだと思います。
― すごくいいエピソードですね!聞いていて私もすごく嬉しくなりました。逆にご家族への情報共有で困ったことなどはありましたか?
開設当初は私たち自身がケアコラボの使い方を把握しきれていなかったのもあり、家族共有はしない方向でスタートしました。
導入段階では家族公開機能をしっかり使おうと橋本と話をしていましたが、実は最初の半年は全く使っていませんでした。
段々とご家族と情報共有するところに課題を感じ始め、社内で話し合いをした結果使うことになりました。
― 確かに最初から全ての情報を公開するのは不安に感じる部分が多いと思います。
スタッフの負担になるかもと考えて最初は使っていませんでしたが、ご家族の反応がすごくいいので結果的には使って良かったと思います。
ご家族と信頼関係を築けるというのが、家族共有のもう一つの価値だと思っています。
直接会話はできなくても、ご家族と文面でのやり取りでも回数を重ねることで親しみが出ますよね。実際に会った時にも話しやすくなります。
ただ、ひとつ難しさを感じているところは、ご家族からのコメントになるべく返したいと思っていますが、時間の問題で全てに返すことが難しい点です。
今は大事なコメントをいただいた時以外は基本的にいいねボタンを押してお返事としています。そこはコントロールが難しいなと思うところですね。
― そうですね、ご家族からのたくさんのコメントをいただくと他の法人さんでも聞いています。 最初から全部の機能を使わなければと感じる方もいらっしゃるので、慣れてきた段階で使う機能を増やす方法をぜひ教えてください。
家族共有することだけで言えば、最初からやっていてもそこまでの負担はなかったのかなと感じています。
ご家族に共有したい記録にチェックを入れるだけなので、操作がすごく楽だというのが一番大きな要因です。
家族共有の機能については、他のスタッフも含めて使い方が分からないとなることはほとんどありませんでした。
共有する情報はポジティブなものを優先して
― 最初からご家族に共有するものだという前提で、記録をつけることを意識されていましたか?
ご家族に共有する文章は特に丁寧に書きますし、ご利用者の状態が悪くなっているといったネガティブな要素は控えるようにしています。
気をつけて書いても文面だけだとショッキングに伝わることもあるので、基本的には楽しそうな場面やポジティブな部分を優先して記録を共有していますね。
ただ、あるご家族からは自宅での様子が変わったので、施設にいる時も変化があるのではないかということで、ネガティブな部分も本当は記録として共有して欲しいと依頼されたことがあります。
― ご家族からはネガティブなことも共有してほしいというニーズがあったんですね。
ご利用者とご家族との関係性も大きいと思います。
そのご利用者のことをよく考えているご家族なので、ネガティブな様子も知って、その時々の状態に合わせて適切な関わり方をしたいという想いがあるんだと思います。
知りたいかどうかはご家族によると思いますし、公開する内容のコントロールが難しいので、基本的にはネガティブな記録はあまり共有しないようにしています。
プロフィール、人生録など様々な機能を便利に活用
― その他にもケアコラボを使っていてよかった点はありますか?
プロフィールに記載された住所をタップすれば、すぐにGoogleマップが開く機能はとても便利ですね。
新しいスタッフやご利用者が来た際に、既存のスタッフへ共有しやすいのですごく助かっています。
― ちょっとしたことですけど便利ですよね。
あとは全員ではないですがご利用者の「人生録」もいいですね。
それを読むとご利用者がどんな仕事をしていたかなどが分かるので、作業内容を考える時にこの人は得意そうだからこの部分をお任せしよう、こういう関わり方をしようというヒントになります。
直接ご利用者とお話しすると当時のことを覚えていないこともありますが、書いてあれば分かりやすいですよね。
― ご家族と一緒に作れる「人生録」は読んでいてもおもしろいですよね。
以前いた事業所では「ご利用者と一緒にいるのがしんどいからデイサービスに行ってほしい」という場合、ご家族と協力できないことがよくありました。
今はケアコラボで記録や人生録など含めて情報を共有する中で、どうすればご利用者がより良い時間を過ごせるかを、ご家族と一緒に考えていけるというのはすごくいいなと思っています。
他には、バイタルの記録をご利用者の病院受診時にご家族にお渡しして、情報として使っていただいたことがあります。
今まで一例だけなのですが、根拠となるものをお渡しできることがよかったと思っています。
― 事業所で計測したバイタルを、ご家族が個人で使われたんですね。はじめて聞きました。
もう一つ、家族共有した情報をケアマネの方に印刷してお渡ししています。
ご利用者が普段どのように過ごしているか知りたいケアマネの方もたくさんいらっしゃいます。
モニタリングを作ってお渡ししていますが、どうしても細かいリアルなところは伝わりにくいんです。
また文面だけだとケアマネさんも忙しくてあまり読んでいただけないこともあるので、少しタイミングをずらして月の中旬に担当のご利用者の記録を印刷してお渡ししています。
― 月に一回ではなくあえてタイミングをずらしているんですね。
実績をお渡しする時とはタイミングをずらしています。ケアマネさんと直接お話をする機会があるときは、ご利用者の様子を直接伝えるなどちょっとした営業のような時間としても使えています。
そうすることでくらすばは丁寧に見ているということが、ケアマネさんに伝わっているような印象を受けます。一種の営業のツールとしても使えています。
― ご家族だけではなくケアマネなどの外部に対しても、信頼を得るツールとして共有していただいているんですね。
個人的にすごく大事にしているのがご家族との情報共有です。今まで介護業界ではあまり重点を置いて取り組んできてないところだと感じています。
ご利用者の生の様子が伝わると、ご家族もすごく熱心に一緒に考えてくださいます。
ご家族のレスパイトとしてデイサービスに来てご利用者が過ごすだけではなく、家での時間の質も上げていく、いい時間を過ごしてもらう点で情報共有が大きな肝になってくると思っています。
今後事業者は外部からの信頼を維持しながら運営していかなくてはなりません。
ケアコラボのようなご家族と相互にやり取りができる機能を持ったシステムを、私は色々な事業者へもっと推していきたいなと思っています。
― 記録を通じてケアの質を向上させようというお話が聞けて嬉しく思います。
「なぜ」を伝えて運用しやすい工夫を
― 様々な機能の運用方法を現場の方々にどのように周知していきましたか?
あらかじめミーティングで伝える方法を考えておき、なるべくスタッフ全体に同時に周知するようにしています。
そして、なぜその機能を使うかの「なぜ」の部分を必ずお伝えしています。
スタッフに「自分ごと化」してもらうようにしています。変えることで、より質が高くなる、自分たちも楽になる、ご利用者やご家族にとってもいいことがある、ということを必ず伝えています。
その上で実際に操作しながらざっくりと使えるようにし、次の日からスタートしていますね。
― みなさんが納得した上で使っているので周知がしっかりできているんですね。では今後の展望や期待をお聞かせください。
ケアコラボを通じての情報共有がご家族に対してどのような影響を与えているのか、とても気になっています。
情報共有自体がご利用者や一緒に暮らすご家族に対しての介入手段の一つになると考えていて、影響を明確にすることで立証してみたいです。
ケアコラボを使っていて一番いいと感じている機能なので、事例としてデータを出すことができるといいとは思っていますね。