シリーズケアコラボの視点
看取りケアとは?ご家族と共に最期まで「その人らしく」生き切るための支援と流れ
看取りケアとは、人生の最期までその人らしく生きることを支えるケアのことです。ターミナルケアとの違いや、ACPを含む具体的な流れを正しく理解することが第一歩です。
本記事では、看取りケアに関する基礎的な知識に加え、離れて暮らすご家族の不安を解消する方法について解説します。単なる「身体的・精神的なケア」だけではない、ご本人の「人生の物語」を完成させるための、温かい支援のあり方をお伝えします。

看取りケアとは?ターミナルケア・緩和ケアとの違い
看取りケアとは
看取りケアとは、人生の旅立ちの時を迎える方が、最期までその人らしく穏やかに過ごせるように支えることです。無理な延命治療で時間を引き延ばすことよりも、痛みや不安をやわらげ、住み慣れた環境で自然な時間を過ごすことを大切にします。主な対象は、末期がんや難病の終末期にある方、そして加齢に伴い心身の機能が穏やかに低下していく「老衰」の状態にある方などです。
それは「死」を待つだけの暗い時間ではありません。好きな音楽を聴いたり、家族のぬくもりを感じたりしながら、残された日々を心豊かに「生きる」ためのお手伝いです。ご本人はもちろん、そばで見守るご家族の不安な気持ちに寄り添うことも、看取りケアの大切な役割です。
ターミナルケアと看取りケアの違い
ターミナルケアとの大きな違いは、「医療」と「生活」のどちらに軸足を置くかです。ターミナルケアとは主に病院で行われ、医師の管理のもと、痛みの緩和や医療的な処置を優先的に行います。一方で看取りケアは、介護施設や自宅などの「生活の場」が中心です。
医療行為は必要最小限にとどめ、いつもの部屋で、いつものように過ごす「日常」を最期まで守ることに重きを置きます。医療の力で身体を支えるのがターミナルケアなら、温かい介護の力で、その人らしい暮らしを支えるのが看取りケアと言えます。
緩和ケアと看取りケアの共通点と相違点
緩和ケアと看取りケアは、どちらも「痛みや苦しみを和らげる」という点では同じです。身体の痛みだけでなく、心のつらさも取り除き、穏やかな時間を守ることが共通の目的です。
その違いは、ケアを行う「時期」と「役割」にあります。 緩和ケアは、がんや心不全などの病気がわかった早い段階から、最期の時まで、病気の時期に関係なく行われます。治療と並行して、自分らしく生きるために痛みや症状をコントロールするものです。
医療的な専門技術で苦痛をとるのが緩和ケア、日々の温かい暮らしの中で安らぎをつくるのが看取りケアと言えるでしょう。
看取りケアが目指す「尊厳ある最期」
看取りケアのゴールは、単に死を見届けることではありません。ご本人が長い人生で大切にしてきた価値観や、自分らしさを最期の瞬間まで守り抜くことです。
たとえ言葉が話せなくなったとしても、一人の人として尊重され旅立つこと。恐怖や孤独ではなく、「いい人生だった」という満足感に包まれて最期を迎えられるよう、ご本人の意思や想いに寄り添う姿勢が求められます。
看取りケアはどこで行う?介護施設・自宅・病院それぞれの特徴
介護施設(特養・有料老人ホームなど)での看取り
介護施設での看取りは、24時間の見守りと生活支援を受けられる安心感があるのが、最大の特徴です。病院のような高度な医療設備はありませんが、その分「生活の場」としての温かさがあります。使い慣れた家具に囲まれて過ごしたり、顔なじみの職員や他のご利用者の気配を近くに感じられたりと、最期まで孤独を感じにくい環境です。看護師や介護スタッフが連携し、ご家族の負担を減らしながら穏やかな時間を過ごすことができます。
住み慣れた我が家で最期を迎える「在宅での看取り」
「最期はやっぱり自宅がいい」という願いを叶えるのが、在宅での看取りです。訪問診療医や訪問看護師、ヘルパーがチームを組み、定期的に自宅を訪問してケアを行います。ご家族やペットと自由に過ごせること、面会時間の制限がないことが大きなメリットです。ご家族の介護負担は大きくなりますが、住み慣れた景色の中で、自分たちのペースで最期の時間を過ごすことができます。
医療的処置を優先する場合の「病院」での対応と限界
病院は治療を行う場所であるため、急変時の対応や痛みのコントロールといった医療的処置においては最も安心できる環境です。しかし、点滴やモニター装着などの管理が優先されやすく、「生活」の自由度は低くなる傾向があります。
また、医療制度上治療の必要性が低いと判断された場合は、転院や退院を求められることもあり、「ずっと病院にいれば安心」とは言い切れない側面もあります。
看取りケアの流れとACP(人生会議)の重要性
アドバンス・ケア・プランニング(ACP)で「希望」を共有する
ご本人の価値観や「自分らしさ」を、最期まで大切にするための準備として欠かせないものがACPです。アドバンス・ケア・プランニングの頭文字を取ったACPは、人生会議とも呼びます。もしもの時に備えて、大切にしている価値観や、どのような医療・ケアを望むかを事前に話し合うプロセスのことです。
意識がなくなってからでは、ご本人の本当の気持ちは分かりません。「延命治療は望むか」「誰にそばにいてほしいか」「最期はどこで迎えたいか」。元気なうちから、あるいはケアが始まった段階から、ご本人・ご家族・ケアチームなどで対話を重ね、想いを共有しておくことが、悔いのない看取りの土台となります。

看取りの期間ごとの変化(適応期・安定期・看取り期)
看取りケアが始まる際、ご本人やご家族の心と身体の変化を理解しておくことは、非常に大切です。看取りケアは、状態に合わせて段階的に変化していきます。死を受け入れこれからの過ごし方を考える「適応期」、症状が落ち着き穏やかな日常を過ごす「安定期」、そして身体機能が低下し、最期の時が近づく「看取り期」へと移り変わります。
それぞれの時期によって、ご本人が求めるケアや、ご家族が必要とするサポートは異なります。先の見通しを持ち、段階に応じた環境や心の準備を整えていくことが大切です。
支援者と家族をつなぐ「看取り介護計画書」の役割
終末期に看取りケアを希望された方に必要になるのが、「看取り介護計画書」です。看取り介護計画書は、これまでのACPで話し合われたご本人の意向や、医師の判断など、大切な情報をもとに作成され、ケアチームの共通の指針となります。どのようなケアを行うのか、緊急時はどう対応するのかを明文化し、支援者側からの説明にご家族が同意することで運用されます。
この計画書がケアの方向性を示す道しるべとなることで、スタッフは迷いなくケアにあたり、ご家族も方針を理解した上で安心して任せることができるようになります。
「一人で決めなくていい」チームで支える意思決定
ご本人の意思が確認できなくなった時、代理で判断するご家族のプレッシャーは計り知れません。「本当にこれでいいのか」と悩んだ時に支えになるのが、ACPと看取り介護計画書の存在です。過去のご本人の言葉や価値観をチーム全員が知っていることで、医療・介護スタッフも一緒に悩み、考えることができます。
看取りの責任をご家族だけに背負わせるのではなく、チーム全員でご本人にとって最善の答えを導き出すために、一つひとつの情報の共有がとても大切になります。
【ご本人への支援】尊厳を守り、その人らしく「生き切る」ためのケア
身体的ケア:安楽な姿勢の保持
最期の時が近づくと、痛みや息苦しさが出ることがあります。医師と連携して薬で症状を和らげることはもちろん、クッションを使って楽な姿勢を整えたり、身体を優しくさすったりすることで、身体的な苦痛を取り除きます。まずは身体を楽にすることで、心穏やかに過ごせるゆとりを生み出します。安らかな表情で休める時間を増やすことが、介護現場における最優先事項の一つです。
精神的ケア:タッチングと声掛け
死への恐怖や、「一人になってしまうのではないか」という孤独感は、計り知れないものです。そんな時は手を握ったり、背中をさすったりする「タッチング」を通じて、温もりを伝えることができます。「ここにいますよ」「大丈夫ですよ」と優しく声をかけ続けることで、ご本人は一人ではないという安心感を得られます。

好きな音楽や思い出の品に囲まれた環境づくり
その人らしい空間をつくることもケアの一つです。大好きだった演歌を流したり、お孫さんの写真を枕元に飾ったり、愛用していた毛布を使ったり。馴染んだものに囲まれているだけで、人はとても安心します。窓を開けて風を感じてもらったり、好きなお花の香りを届けたりと、いつもの日常に近い環境を整えるのも大切です。
食事・排泄の介助における自尊心の配慮
食事が喉を通らなくなるのは、身体が自然と最期の時を迎える準備に入ったサインでもあります。無理に食べさせることは、かえってご本人の苦痛になりかねません。「食べたいものを、食べられる分だけ」楽しんでいただくことを大切にします。また、排泄ケアにおいても、羞恥心への配慮を忘れてはいけません。たとえ意識が薄れていても、ご本人の尊厳を守るよう、細心の注意を払ってケアにあたります。
言葉にならなくなった「小さな変化」や「表情」を記録から読み解く
言葉を発することができなくなっても、呼吸の穏やかさや視線の動きの一つひとつに、ご本人の今の状態が表れています。介護現場では、日々の記録を通じて「今日は昨日より表情が柔らかい」「この音楽をかけると呼吸が落ち着く」といった小さな変化をチームで共有します。記録は単なる業務報告ではありません。声なき声に耳を傾け、ご本人が今なにを感じ、なにを求めているのかを読み解くための大切な手がかりとなります。
【ご家族への支援】「会えない時間」の不安をなくすために
離れて暮らす家族も安心できる、日々の様子(写真・動画)の共有
遠方に住んでいたり、仕事で頻繁に面会に来られなかったりするご家族にとって、「今どうしているか」が分からない時間は不安なものです。グループウェアや介護ソフトを活用して、日常のケアの様子や穏やかな表情を、写真や動画でご家族へ届ける取り組みも有効です。「今日は日差しを浴びて、とても安らかなお顔で眠られています」「清拭をしてさっぱりされました」といった報告や写真が、離れているご家族の心を救い、つながりを感じられる理由となります。

「危篤時だけの連絡」ではなく、日常の様子を伝える
施設からの連絡が「危篤の知らせ」だけでは、ご家族は心の整理がつかないままお別れを迎えることになってしまいます。看取り期の自然な変化のプロセスをこまめに共有することで、ご家族は「その時」が近づいていることを、少しずつ自然に受け入れていくことができます。
また日々の細かなケアの様子を伝えることは、ご家族の不安を和らげるだけでなく、「離れていても一緒にケアをしている」という安心感につながります。丁寧なケアが可視化されることで、施設への信頼感は高まり、やがてスタッフへの深い感謝となって返ってきます。
家族参加型の看取りケア
ご家族にもチームの一員としてケアに参加してもらうことも大切です。口元を湿らせてあげたり、好きなハンドクリームを塗ってあげたり。直接的なケアができなくても、送られてきた日々の記録に「ありがとう」とコメントを返すだけでも立派な参加です。「自分もケアに関われた」という実感は、お別れの後、ご家族自身の悲しみを癒やす大きな力になります。
看取りケアのゴールとは
単なる「業務」ではなく、ご本人が生きた証としての記録
日々残される記録は、もちろん業務として必要なものですが、同時にご本人がここでどう過ごし、どう生きたかという「人生の証」としての価値もあります。何気ない会話、好きだった歌、安らいだ表情。それらを丁寧に書き留めていくことは、結果としてその方の人生という物語を紡ぐことにつながります。記録は、日々のケアを支えるだけでなく、最期まで輝いていた命の時間を刻み込む、大切なアルバムのような役割も果たしてくれるのです。
「ここで最期を迎えられてよかった」と言われる施設が大切にしている視点
ご家族から「ここで最期を迎えられて本当によかった」という言葉をいただける施設は、「死なせないこと」ではなく「どう生ききるか」を大切にしているように感じます。医療的な延命措置の有無にかかわらず、ご本人の安らぎや心の満足度を最大限に尊重しようとする姿勢です。
ご本人が安らかに旅立ち、ご家族から「ここで良かった」「皆さんのおかげで悔いはありません」という言葉をいただけた時、それはケアに関わった職員にとっても大きな救いと誇りになります。悲しみの中に温かい感謝が通い合う関係性を築くこと。それもまた、看取りケアにおいて大切にしたい視点の一つです。
看取りケアは「死」の管理ではなく、「生」の完結を支えること
看取りケアを「死までの業務」と捉えてしまうと、それはただ辛く悲しい仕事になります。しかし、視点を変えれば、それは「一人の人生の物語が完結する瞬間に立ち会い、その最期をその人らしく生ききるためにチームで支えること」となります。ご本人、ご家族、そしてスタッフが手を取り合い、想いを一つにして旅立ちを支える。その尊い営みこそが、看取りケアの本質なのです。

看取りケアの「記録」と「家族共有」を支えるケアコラボ
本記事でご紹介した「人生の証としての記録」や、ご家族への「日常のプロセスの共有」をスムーズに実践できるのが「ケアコラボ」です。
写真や動画で残す「人生の証」
ケアコラボは、スマホで撮影した写真や動画を記録として残せます。文章では表現しきれない、ふとした瞬間の「穏やかな表情」も写真で記録できます。単なる業務の記録を超えた、ご本人が最期まで輝いていた証となります。
ご家族と日常をシェアして「安心」を提供
記録はすぐにご家族にも共有できます。「今日はこんなご様子でした」と日常の記録を共有することで、離れて暮らすそのご家族も安心でき、施設との信頼関係が深まります。良くないお知らせをする時だけでなく、日々のプロセスを共有することで、ご家族と心を一つにして「その時」を迎えることができます。


「人生録」で、その人の“これまで”をチームの共通の認識に
ケアコラボには、ご本人の生い立ちや趣味、大切にしてきたものを記録する「人生録」という機能があります。 言葉でのコミュニケーションが難しくなった看取り期においても、スタッフ全員が「その方がどんな人生を歩んできたか」を深く理解していれば、かける言葉や流す音楽、接し方の一つひとつが変わります。
ご本人の最期を見届ける「看取り」については、相談をしづらいことかもしれませんが、実践事例などをもっと詳しく聞いてみたい方、ご家族との関係性づくりをお考えの方は、ぜひ一度お問い合わせくださいませ。