シリーズ活用事例
「どうしてもここで働きたい」 その思いを生み出す人材採用とは
福祉現場のお悩みとしてよく聞かれる、「人材採用」や「定着」について。ケアコラボを導入いただいている、社会福祉法人平野の里さんは、ケアコラボを人材採用でも活用いただいています。
今回は、どのような人材採用戦略を取られているのか、またケアコラボはどのような場面で活用されているのか、人事担当の杉村さんにお話を伺いました。

「誰でも受け入れる採用」に課題を感じていた
― 杉村さんの業務の内容と施設について教えてください。
私たちの法人は、埼玉県の幸手市という、東に筑波山、西に富士山が見えるような、本当にのどかな場所で事業を行っています。昭和63年に設立され、約40年になります。もともとは定員50名の入所施設・あやめ寮を母体としてスタートし、時代の変化と共に、ここ15年ほどでグループホームや相談支援事業も展開してきました。
私自身について少しお話しすると、実はもともと家が工務店で、大学を出て住宅会社に勤めていました。福祉とは全く無縁の世界から、今から約21年前にこの平野の里に転職してきたんです。福祉のキャリアの方が随分長くなりましたね。
現在私は、課長として人事担当をしています。特に人材採用に力を入れていて、中でも新卒採用にこだわっています。そして、もう一つ非常に大事にしているのが、今でも「現場」に出続けていることです。月に5回ほど、つまり月の半分くらいは支援員として夜勤にも入っています。これは、単に人手が足りないからというだけではなく、若い職員の育成やフォロー、そして何より私自身が現場の感覚を失わないためです。
― 採用について、どんな課題があったのか教えてください。
正直にお話しすると、昔の採用は本当に大変でした。
「次の応募者が来てくれるか分からないから」という思いから、言ってしまえば「誰でも受け入れる採用」をしていた時期もありました。リクルートの営業の方からも、「内定は軽く出してはならない」とアドバイスされたくらいです。でも、そうやって採用した方は、残念ながら動機づけが弱く、早くに辞めてしまうことが多かったです。
採用に関連することでいうと、当時の記録の方法にも課題がありました。私が転職してきた20年以上前は完全に手書き。その後、記録ソフトを導入しましたが、使えるパソコンの台数が限られていて、記録のために現場を離れなければなりませんでした。非効率である上に、記録の抜け漏れや質のバラつきもあり、「このままで本当に良いのだろうか?」というモヤモヤをずっと抱えていました。
応募者にとって、記録に課題を抱えている法人に入職するのはマイナスですよね。
特に積極的に採用していきたい若い世代は、スマホやタブレットの操作には慣れていると思いますが、当時紙やパソコンで記録していた当法人は、決して魅力的には映らなかっただろうと感じています。
「ここで働きたい」と思ってもらうための「夜勤体験」
― 何がきっかけで変わろうと思ったのでしょうか?
大きなきっかけは、他の法人さんの取り組みを知ったことです。
記録システム「ケアコラボ」を利用している東京都町田市の法人さんに見学に行ったとき、職員さんが介助中に、スマホやタブレットで記録をピッと入力している姿を見て、本当に衝撃を受けました。「これだ!」と。インカムで静かに連携を取り、スマホで「ケアコラボ」に記録しながら、スマートにケアが進んでいく。「私たちがやっていることと、何がこんなに違うんだろう」と愕然としました。
そこで強く思ったんです。「良い人材を採りたいなら、まず自分たちが変わらなきゃダメだ。魅力ある職場でなければ、良い人は来てくれない」と。そこからですね、採用の考え方を180度変えました。「誰でもいい」ではなく、「平野の里でどうしても働きたい」と思ってくれる、熱意ある人材を獲得しよう、と。
そして、採用につながる魅力向上を期待して、見学先の法人さんが利用していた「ケアコラボ」の導入を決意しました。
― ケアコラボを、どう採用に活かしたのですか?
まず、採用活動の中心を、説明会からインターンシップ、つまり「体験」にシフトしました。そこで思いついて始めたのが「夜勤体験」です。学生が不安に感じがちな夜勤を実際に体験してもらい、「怖くないよ、むしろ日中より落ち着いてご利用者さんと向き合える時間もあるよ」と伝えたかったんです。
最初は興味を持ってくれる学生は少なかったのですが、一番最初に参加してくれた学生から感想をもらい、募集時に公開することで、興味を持ってくれる学生がどんどん増えました。学生が来てくれるようになったことで、学生が何を求めているかもわかるようになりました。
そして、このインターンシップで、ケアコラボを最大限に活用しました。 学生には、実際にケアコラボを触ってもらいます。記録がリアルタイムで共有される様子、ご利用者さんの日々の活動や笑顔が写真や動画で残っているのを見てもらう。これが、私たちの仕事のリアル、支援の質を伝える一番の方法だと考えました。そして、学生たちは目を輝かせて見てくれるんですよね。

スマホで記録できること自体、若い世代には当たり前の感覚に近いので、抵抗なく受け入れてもらえますし、「紙じゃないんですね!」という驚きが、そのまま施設の先進性のアピールにもなります。
また、夜勤体験の合間などには、ケアコラボと同じ端末でeラーニング(スペシャル ラーニング)なども見せます。「うちではこういう学びの機会もあるんだよ」と伝えることができますからね。
― 学生は就職先を検討するとき、どのような点をみていると思いますか?
学生は、ICTツールのような働く環境と合わせて、その事業所の雰囲気や空気感もよく見ていると思います。そのため、「わたしたちを選んでほしい」というスタンスはなるべく出さずに、あえて「他の良い法人さんも見てみたら?」と紹介することもあります。囲い込もうとするのではなく、余裕を見せることで、逆に「この人は信頼できる」と思ってもらえる。そうやって関係を築いた上で、「それでも平野の里がいい」と選んでくれた人は、本物だと思うんです。
採用窓口の対応一つで、学生が受け止める印象は全然違うと思います。インターンを通して、「杉村さんと働きたい」と思ってもらえると嬉しいですよね。
新卒7名中6名が1年前から入職を希望する「選ばれる法人」に
― 夜勤体験や採用面でのケアコラボの活用は、どんな効果がありましたか?
効果は、正直、期待以上でした。今年(2025年)の4月には、過去最高となる7名の新卒が入職してくれました。うち6名は、昨年の5月までに『ここで働きたい』と意思を決めてくれていたんです。その多くが、夜勤体験を通じてケアコラボにも触れ、「平野の里で働きたい」と強く思ってくれた学生です。中には夜勤体験が楽しくて、11回も来てくれた学生もいるんですよ(笑)。自分で納得して選んでくれたからこそ、きっと長く続けてくれると信じています。
今では、ケアコラボは「平野の里の強みであり、自負」です。見学に来た方や学生にも、自信を持って「うちはケアコラボを使っていますよ」と紹介しています。


採用だけでなく組織や支援が変わった
― 今後の展望についておしえてください。
ケアコラボは、単に記録が楽になるとか、ペーパーレス化できるとか、そういう単純なツールではありません。採用を変え、働き方を変え、組織文化を変え、そして支援の質そのものを引き上げる力を持っていると思います。
ケアコラボを導入する法人が増えたら、障害者福祉分野の業界のイメージや空気感も変わると思っています。業界全体がもっと良くなるために、一緒にこのツールを育てていけたら、こんな嬉しいことはありません。

★平野の里さん 導入事例記事はこちら★