「ケアマネの更新研修、次は誰がいつだったか」。多くの事業所で続けてきたこの管理が、形を変えます。
2026年6月19日に成立し、6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)で、ケアマネジャー(介護支援専門員)資格の更新制の廃止が正式に決まりました。
ただし、「更新がなくなる=研修がなくなる」ではありません。研修の受講は法令上の義務として位置づけ直され、さらに、ケアマネジャーを雇用する事業者の側にも新しい義務が生まれます。
この記事では、厚生労働省が公布と同日付で発出した介護保険最新情報Vol.1518をもとに、何がなくなり、何が代わりに生まれるのか、そして管理者の実務がどう変わるのかを整理します。
📌 この記事の3つのポイント
- 介護支援専門員証の「5年の有効期間」と、更新のための研修は廃止される。施行は2027年4月ではなく、公布から1年6か月以内に政令で定める日(2027年12月25日まで)
- 代わりに、都道府県知事が行う研修の受講が法令上の義務になる。受講命令に従わなければ、1年以内の業務禁止もあり得る
- 事業者には「報告義務」と「受講機会を確保する措置義務」が課される。管理の軸は「個人の更新期限」から「事業者としての受講管理」へ移る
📖 1. そもそも、これまでの更新制とは
まず、現行の仕組みを確認しておきます。
ケアマネジャーとして働くには、都道府県が交付する「介護支援専門員証」が必要です。この証には5年の有効期間があり、期間内に法定研修を修了して更新しなければ、ケアマネジャーとして業務を行うことができませんでした。
実務に就いているケアマネジャーの場合、更新にあたっては専門研修課程Ⅰ(56時間)と専門研修課程Ⅱ(32時間)、あわせて88時間の研修を受講するのが一般的でした(経験年数や主任介護支援専門員かどうかによって、受講する研修は異なります)。
この仕組みには、現場から長く課題が指摘されてきました。
- 受講者の経済的・時間的な負担が大きい
- 固定された研修日程にやむを得ず参加できなかった場合に、即座に資格が失効してしまう
- 失効によって担当者の急な変更や事業所の休廃止が生じ、利用者の不利益にもつながる
- 更新のタイミングが、ケアマネジャーを引退するきっかけになっている
社会保障審議会・介護保険部会でも、こうした課題を踏まえて更新制の見直しが議論されてきました。日本介護支援専門員協会も、更新制は廃止する一方で、定期的な研修は必要だという立場から意見を出しています。
その結果として生まれたのが、今回の改正です。
✂️ 2. 何がなくなるのか
介護支援専門員証の有効期間そのものが廃止されます。あわせて、証の交付や有効期間の更新を受けるために受講することとされていた研修も廃止されます。
つまり、「期限までに更新研修を受けなければ資格が失効する」という仕組みがなくなります。
施行日に注意が必要です
改正法の原則の施行日は2027年4月1日です。しかし、更新制の廃止はこの日ではありません。
公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日、つまり2027年12月25日までのどこかの日から施行されます。具体的な日付は、まだ決まっていません。

廃止の日付は政令で決まり、遅くとも2027年12月25日までには施行されます。それまでは、今の有効期間と更新研修のルールがそのまま生きています。
「2027年4月から更新がなくなる」と理解していると、施行日前に期限を迎える方の更新を見逃すおそれがあります。施行日をまたぐ方の扱いは、今後の経過措置で示されます。それまでは、現行の有効期間と更新研修の日程をこれまでどおり管理しておくのが安全です。
※改正法全体の施行日の整理は、前回の記事「【改正介護保険法】施行日は「2027年4月」だけではありません」でまとめています。
🌱 3. 何が代わりに生まれるのか
更新制はなくなりますが、研修そのものがなくなるわけではありません。むしろ、研修の位置づけは「資格を維持するための条件」から、「法令上の義務」へと変わります。

管理者に直接関わるのは、都道府県知事への「報告」と、ケアマネジャーへの「受講機会の確保」の2つです。それぞれの中身は「4. 事業者に生まれる2つの義務」で整理します。
研修の受講が、法令上の義務になります
厚生労働省令で定める者を除く介護支援専門員は、その資質の保持および向上を図るため、都道府県知事が行う研修として厚生労働省令で定めるものを受けるものとされました(改正後の第69条の34第4項)。
ここで注目したいのは、「厚生労働省令で定める者を除く」という部分です。どのような人が研修の対象外になるのかは、今後の省令で示されます。
受講しない場合の担保も設けられています
都道府県知事は、ケアマネジャーが正当な理由なく研修を受けていないと認めるときは、受講を命ずることができます。その命令に従わない場合には、1年以内の期間を定めて、介護支援専門員としての業務を禁止することができます。
「期限が来たら自動的に失効」から、「受講していなければ命令、それでも従わなければ業務禁止」へ。受講しなくてよくなるわけではなく、担保の仕方が変わると理解するとよいと思います。
受講状況も管理されるようになります
都道府県知事は、「指定研修受講管理機関」に研修の受講管理に関する事務を行わせることができるようになります。必要なときは、受講状況を確認するための指示も出せます。
つまり、「誰がどこまで受講したか」の情報も、把握されることになります。
研修の受け方も見直される方向です
審議会の議論では、研修の講義部分を可能な限り縮減することや、オンデマンド形式の活用、一定期間内に分割して受講できる仕組みなど、ケアマネジャーの負担を軽くする方向性が示されてきました。
ただし、具体的な時間数や受講の頻度は、まだ決まっていません。この点は、今後の省令や通知を待つ必要があります。
改正前と改正後を比べると
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 資格の有効期間 | 5年 | なし(有効期間そのものを廃止) |
| 研修の位置づけ | 証の交付・更新を受けるために受講する研修 | 資質の保持・向上のため、法令上受けるものとされる研修 |
| 受講しなかった場合 | 有効期間の経過で資格が失効 | 知事が受講を命令。従わなければ1年以内の業務禁止 |
| 受講状況の管理 | 本人と事業所が更新期限を管理 | 指定研修受講管理機関が受講管理を担うことができる |
| 事業者の役割 | 失効させないためのシフト調整(法上の義務はなし) | 従事状況の報告義務と、受講機会を確保する措置義務 |
| 事業者が義務を果たさない場合 | 規定なし | 勧告 → 公表 → 命令 → 指定権者への通知 |
🏢 4. 事業者に生まれる2つの義務
ここが、管理者にとって最も重要な部分です。
今回の改正では、ケアマネジャー本人だけでなく、雇用する事業者の側にも義務が課されます。対象は、都道府県または市町村の条例により介護支援専門員を置かなければならないとされている事業者・施設の開設者です。居宅介護支援事業所に限らず、特養や老健、グループホーム、小規模多機能型居宅介護など、ケアマネジャーの配置が必要な事業所・施設も含まれると考えられます。
1つめ:報告義務
研修対象となるケアマネジャーを業務に従事させたとき、または従事しなくなったときは、その氏名などを、そのケアマネジャーが登録している都道府県知事に報告しなければなりません(改正後の第69条の40第1項)。
採用や退職、異動のたびに報告が必要になる、ということです。報告する項目や方法は、今後の省令で定められます。
2つめ:受講機会を確保するための措置義務
研修対象のケアマネジャーを従業者として雇用しているときは、そのケアマネジャーが研修を受講できる機会を確保するための措置をとらなければなりません(同第2項)。
具体的にどのような措置が求められるのかは、省令で定められます。ただ、「受講するかどうかは本人次第」では済まなくなる、という方向性は法律で確定しています。
義務を果たさない場合は、4段階で担保されます
報告をしない、または措置をとっていないと認められた場合には、次の流れで対応が進みます。
- 勧告:都道府県知事が期限を定めて、報告または措置をとるよう勧告できる(第69条の40第3項)
- 公表:期限内に勧告に従わなかった場合、その旨を公表できる(同第4項)
- 命令:指定事業者・介護保険施設の開設者が、正当な理由なく措置をとらなかった場合、期限を定めて命令できる。命令したときは公示される(同第5項・第6項)
- 指定権者への通知:命令に違反した場合、指定・許可をした都道府県知事または市町村長に違反の内容が通知される(同第7項)
公表や指定権者への通知まで定められている点からも、「受講できる環境を整えること」が事業者の責任として明確に位置づけられたことが分かります。

🗂️ 5. 管理者の実務は、ここが変わります
「失効させない管理」はなくなります
これまでの管理は、「失効させないこと」が中心でした。誰がいつ更新期限を迎えるかを把握し、研修日程に合わせてシフトを組む。更新制が廃止されれば、この作業はなくなります。
軸は「受講状況を把握し続けること」へ
一方で、従事状況の報告と、受講機会の確保が、事業者の義務として新たに生まれます。
「更新がなくなる=管理がなくなる」ではありません。「個人の更新管理」から「事業者としての受講管理」へ、軸が移るという理解が必要です。
オンデマンド化で、進捗は「見えにくくなる」
研修がオンデマンド化されると、受講の形も変わります。
集合研修であれば、「この日は研修で不在」という分かりやすい形で、管理者も自然と受講状況を把握できていました。オンデマンドや分割受講になると、業務の合間や就業後に少しずつ進める形が増えるでしょう。
ケアマネジャーにとっては負担が軽くなる一方で、管理者からは誰がどこまで進んでいるのかが見えにくくなる、ということです。
受講時間を「どう扱うか」も論点になります
事業者には、受講の機会を確保する義務があります。そうなると、次のような点を事業所として整理しておく必要が出てきます。
- 受講時間を勤務時間として扱うのか
- 業務時間内に受講する場合、担当利用者への対応をどう調整するのか
- 受講用の端末や通信環境、集中できる場所を用意できるか
どこまでが「必要な措置」にあたるかは省令を待つ必要があります。ただ、方針がないまま施行を迎えると、現場のケアマネジャーは「いつ受けてよいのか」を判断できません。
「記録として残す」ことが、これまで以上に大切になります
報告義務と措置義務には、勧告・公表・命令という担保がついています。「措置をとっている」ことを、事業者として説明できる状態にしておくことが重要になります。
誰がどの研修をどこまで受講したか。事業所としてどんな配慮をしたか。これを事業者として把握・記録できる体制になっているかは、早めに考えておかれるとよいと思います。
☝️ 6. 今すぐ確認できること
省令や通知が出る前でも、現状の確認は始められます。
※チェックは保存されません。ページを開き直すと外れます。
⏳ 7. まだ決まっていないこと
法律で決まったのは、「更新制の廃止」「研修受講の義務化」「事業者の報告義務・措置義務」という枠組みです。中身の多くは、今後の政令・省令・通知に委ねられています。現時点で決まっていないのは、主に次の点です。
- 具体的な施行日(政令。2027年12月25日までのどこか)
- 研修の対象者の範囲。どのような人が対象外になるのか(省令)
- 研修の内容、受講の頻度、具体的な時間数(省令)
- 事業者が報告する項目と方法(省令)
- 事業者に求められる「受講の機会を確保するための措置」の中身(省令)
- 施行日をまたぐケアマネジャーの経過措置(改正法附則・政省令)
これらは、まだ何も決まっていません。確定した情報が出てきたタイミングで、改めてお伝えします。
また、今回の法改正と、2027年度(令和9年度)の介護報酬改定は別のものです。混同せずに、それぞれの動きを追っていく必要があります。
🌸 8. まずは、現状の確認から
更新制の廃止は、ケアマネジャーにとって長年の負担が軽くなる改正です。「更新のたびに辞めるか迷う」という声があったことを考えると、人材の定着という面でも意味のある変化だと思います。
一方で、管理者にとっては「負担がなくなる」よりも、「管理の中身が変わる」というほうが近いかもしれません。個人の更新期限を追う管理から、事業者として受講状況を把握し、受講できる環境を整える管理へ。
施行までにはまだ時間があります。まずは「今、誰がどこまで受講しているか」を確認するところから、一緒に一歩ずつ進めていきましょう。
確定した内容については、必ず厚生労働省の公表資料をご確認ください。毎月更新している「2027年報酬改定ニュース」でも、続報をお伝えしていきます。
出典
- 介護保険最新情報Vol.1518「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(通知)」 令和8年6月25日 厚生労働省社会・援護局長/老健局長/社会・援護局障害保健福祉部長/こども家庭庁支援局長 連名通知(第2の8「介護支援専門員の資格に係る更新制の廃止、研修の見直し等に関する事項」、第10「施行期日等」)
- 社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号) 成立:2026年6月19日/公布:2026年6月25日
- 社会保障審議会介護保険部会意見「介護保険制度の見直しに関する意見」 令和7年12月25日
- 日本介護支援専門員協会「介護支援専門員の更新制・研修制度の見直しに関する意見」 令和7年10月27日 第127回介護保険部会 提出資料