シリーズ活用事例
個別ケアの向上を目指す1dayシート活用【後編】本人の思いを形にする取り組み
※この記事は2023年1月26日に更新されました
ケアコラボの機能の一つである「1dayシート」。
1dayシートでは、ご利用者の望む暮らしや日々のルーティンを、24時間軸で入力することができます。
ご利用者の生活リズムを共有することができたり、リズムの変動や身体状況の変化にいち早く気づくことができたりします。
ケアコラボを導入いただいている社会福祉法人永甲会さんは、この1dayシートを活用し、個別ケアの実践に役立てられています。
前編では、1dayシートの導入から具体的な活用方法について語っていただきました。
後編では、活用における個別ケアに対しての本質的な考えや、個別ケアへの取り組みについてお話を伺います。
ケアコラボは特別養護老人ホーム「かすみの里」「うねめの里」にて利用中。
施設長補佐 兼 施設介護支援専門員
野呂 高宏様
本人が望むケアと実態とを確認することが大切
ー1dayシートの導入を考える場合、何から始めるのがいいでしょうか?
まず1人から作ってみたらいいと思います。
先日、他の施設とオンライン交流会をしたんですが、そこでうちの施設の職員が「自分の好きな入居者さんの1dayシートをまず作ってみな」って。関心が持てるということは気づきを多く持てるということで、それを共有したくなるし、ケアに反映したくなる。
実際にそれが実って形としてケアが提供出来ると、「じゃあ次はどうしよう?」ということになる。ノウハウが体感出来ると次の方へ繋がるケースは、これまで実習後に報告してくれた所が何施設かあります。
いわゆる困難事例、みんなが悩んでいるならとにかく徹底的にアセスメントしてみよう、というケースから取り組むのもいいと思います。
話すことが難しく意思疎通が出来ない方でも、口角の動きや、肌の色合いなど、気づける視点を落とし込みながら1つのシートが出来上がってくると、いつもよりご飯が食べられるようになった変化や背景を捉えやすくなったりもします。
どの方から取り組むかは、職員の施設での経験年数やスキルで考えるのがよいかと思います。特に、何年か入居されている方はケア記録として情報はたくさんあるので、1dayシート自体は形としてはすぐに出来るんです。
それを作ったら次は、ケアが実態に合っているかどうかを確認する作業です。今まで、毎日7時に起きていたけど、7時に起きるのが心地いいかなって考えていくことが大切で、1Dayシートはただのツールです。その方を知るとか、支援していく中でうまく使えばいいものになりますし、使い方を間違えればマニュアルになってしまうこともあります。
実は、以前うちの施設も『ユニット型集団ケア』とも呼べるような、金太郎飴みたいな1dayシートを作っていた時期もありました。
ーはじめから使いこなせたわけではなかったのですね。
2005年4月開設と話しましたが、私は開設1ヵ月前に入職して、研修でこれから入居してくる方のアセスメント表を渡されました。それを見ながら、「じゃあこの方の1日を考えてみて」と言われて、何時くらいに起きて、何時くらいにご飯食べて、寝てもらおう……みたいに、完全にその人の1日をプログラムして、個別ケアだと言い張っていたのが実はスタートです。
そこから、ユニットケアの実習施設になり、ノウハウを他の施設より少し早く学ばせていただく機会がありました。
取り組んでいく中である程度形にしてきましたが、今度はユニットケアの形にとらわれ、シートの形が固定化されてしまう時期がありました。
「それはよくない」と話をしていた頃、2012年に日本ユニットケアセンターに出向する機会をいただき、シートについて見直すきっかけとなりました。施設に戻った2013年から修正して、定着して、また迷走し出して、ということを繰り返しています。
開設してからシートが定着するまでは約3年かかりました。
日課表ではなく、望むケアの背景を知る
ー他の法人から、ToDoリスト化してしまうという悩みをよく伺います。
To Doリスト化を悪いとは思っていません。新人スタッフさんから見た場合や、必要なケアかどうかなどを改めて問うなど、どういう視点で見るか、どう活かしていくかに繋がればいいと思います。
ー1dayシートがToDoリスト化してしまうとき考えられる要因はなんでしょうか?
おそらく、職員の主観で、現時点でサポートすべきことを書いているのではないかと思います。今、サポートしていることではなく、その方のどういった生活を送りたいという思いがないと。
そう考えると、ケアプランとの連動性が重要となってくると思います。その方が何を目標にしているのかや、その人のありたい姿に向けた介護が、きちんと落とし込めているといいですね。
とはいえ私たちもケアプランの目標設定にはものすごく悩んでいます。
例えば「転倒せずに安心して生活を続けたい」という目標と「好きな畑仕事が出来るようになりたい」という目標です。どちらかといったら、その人が思い描くライフスタイルや大事にしてきたことを、施設においてもどう叶えられるか、どうやって形として表せるかっていうことだと思うんです。
しかし、そもそもの目標次第では、生活がToDo化してしまう気がします。
結局ケアプランは、介護保険上の契約の中での法的責任を負う部分があり、現実的に我々がしなければいけないケアを明文化して、記載して、それに合わせてサポート内容を展開していくものです。入居者さんやご家族、地域や時代に合わせて考える必要があり、私たちも模索中です。
ー個別ケアに対する職員への意識づけはどのようにされていますか?
基本に立ち戻り、「1dayシートは日課表じゃないよ」 ということを伝えています。
その日の体調や天候、その前日の過ごし方によって、暮らしぶりは変わります。ある程度職員に裁量権を与え、その日やったことをきちんと記録に残す。そして安易な判断でやったことでなければ否定はしない、という様にしています。
時間をマニュアルにすると日課表になってしまいますが、ユニットケア研修の中では「時間軸以外はマニュアルとして活用できるよ」と伝えています。
どういったことをどんな思いでしたい、どこまでは出来るからこういったことを手伝ってほしい、そこがバラバラになると支援にばらつきができて、統一した関わりが出来なくなるので、ケアの統一化をはかるために活用することもあります。”1dayシートに書いてあるから出来る” 、”ないから出来ない” となるのは違うのではないかと思います。
1番大事にすべきなのは、その方がどこに一番気をつけて欲しいかという思い、好みの部分。そこに重点をおきながら、実際のサポートの仕方は職員のスキルや教育、そのときの施設の体制によってある程度、流動的でもいいのではないかと思います。
ー職員さんが「こうしたほうがいい」と思っても、ケアプランに反映させるまでに時間を要するイメージです。
その場合はケアコラボの申し送り機能で意見を収集し、ユニット会議をまたずして修正することもあります。
今までは申し送りノートを使っていました。しかし見ているのか見ていないのか分からなかったり、書くのが手間でしたが、申し送り機能を使うことでスピーディーに対応出来るようになりました。意見交換が多くなって、もはや申し送りではなくなってきているのは別の課題です(笑)
本人の思いを形にするケア
ーケアコラボは個別性の高いケア記録システムを目指していますが、そう感じる場面はありますか?
以前に比べて、記録の質が変わりました。今までは数値や 「ケアを行いました」 というケア報告が中心でしたが、そのときの入居者さんの様子が記録として含まれているケースが多くなりました。とはいえ記録の量が増えて記入する時間が増えたかというとそうではなくて、写真で置き換えることで文書量が抑えられるようになりました。
スマートフォンでその場で記録が打てることと、写真や動画をアップ出来るところに有用性を感じます。
ー最後に、今1dayシートの活用に悩んでいる方に対してアドバイスをお願いします。
本人の思いを形に出来るケアをする上で必要なツールだと、私は考えています。
取り組みたいと思う背景や、取り組めない原因が何かなど、個別に課題がある話だと思います。時間はかかりますが、やり続けないと時間も過ぎません。
いきなり変えようとするのは難しいことですが、変化を感じ取れるようになれば続くかと思います。困ったら、うねめの里に相談してくださいね。
ーとても心強いメッセージです。ありがとうございました。
おわりに
今回ケアコラボを活用し、個別ケアの実践に取り組んでいる永甲会さんのお話を聞くことができ、わたしたち自身も大変学びになりました。
これからも『人と人が立場を越えて 尊重し、助け合える社会に』という想いをもとに、ケアコラボがみなさまにとってお役に立てるよう、また使いやすい製品であり続けられるよう、引き続き改善を続けてまいります。
ご不明点などがあれば、いつでもお問い合わせフォームよりご連絡くださいませ。