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導入事例

記録業務が「皆に知ってほしいから記録する」という自発的なものに

社会福祉法人親愛会
埼玉県川越市にて、障害者支援施設、共同生活援助、特別養護老人ホーム、デイサービスセンターなどを運営。
『生きるを支える』を経営理念に掲げ、福祉サービスを介して家族、そして社会の一員としての利用者の一人ひとりの人生を応援し、常に質の高い支援、介護を目指すことによって、笑顔あふれる人生、その人生を支えることを目指している。
スタッフ数約 260 名。
総合相談室 所長(ケアコラボ導入当時:共同生活援助グループホームしんあい管理者) 吉田 拓人様
導入前
  • 以前の記録ソフトはパソコンしか使えず、操作性もよくなかった
  • 事業所間での申し送りが対面でリアルタイムに情報共有できなかった
  • 「誰のための記録か」があいまいだった
導入後
  • 各自がスマホからいつでもどこでも記録できるように
  • ケアコラボ上の記録を確認していいねやコメントで反応
  • 「ご利用者のための記録」と目的が明確になり、職員の意識改革

パソコンでの記録方法と情報共有が課題だった

― はじめに、ケアコラボへお問い合わせいただいたきっかけを教えてください。

以前使っていた記録ソフトは、大変使いづらいものでした。
ソフトが入っているパソコンが事務所にしかないため、そこに戻らなければ記録が打てず、また年配の職員に関しては手書きで記録するという非効率な状況。そしてそれぞれのご利用者の様子を把握しづらいという問題が起こっていました。

サービスの質を高めるための情報共有ができておらず「これはもう変えなければ」と、ソフトの見直しを行うことになりました。
以前見学に行った埼玉県秩父市の「社会福祉法人 清心会」さんがケアコラボを使っており、スタッフの皆さんがポケットからスマートフォンを出して「これ良いですよ」って教えてくれたんです。それが問い合わせのきっかけですかね。

― グループホームが8ホーム(現在は9ホーム)あり、職員の方もそれぞれを行き来しているとお聞きしました。そのなかで情報を共有しなければ、良い支援ができないというところからですか?

そうですね。ご利用者がその日どのような様子だったのか分からなければ、良い支援は提供できないと考えていました。 
当時の申し送りは、職員人数が多い13時に集まり、それぞれのホームの昨日までの様子を伝えていました。ただ既に13時なので、午前中の状況が分からず、タイムリーな情報が把握できていませんでした。

「ご利用者本位」を念頭に置いた意識改革から始まった

― 導入していく過程で大変だったことはありますか?

法人の許可を得るまでが大変でした。使っていたソフトのリース期間も2年ほど残っていたので、普通に考えるとソフトの切り替え時期ではないですよね。

なので困っていることや、良いサービスを提供するにはケアコラボがいるという必要性を、とにかく訴えました。

― 金銭的な予算も含めて、資料などでプレゼンテーションをされたのですか?

どういったものかを知ってもらうために資料を作り、グループホームの収支状況も含めて経営会議に挑みました!
我ながらうまくやったなと思います(笑)。

また新しいことの導入に対して、若干保守的な職員が多い傾向だったので、その意識を変えていくことは、ケアコラボ導入に限らず取り組んでいました。

― 記録ソフトの見直し前から、意識改革を行っていたのですか?

比較的、前の年と同じ方法で仕事する傾向だったので、「今やっていることが本当に正しいのか?」ということから考えてもらっていました。

やってみたいことがあるならば、まずやってみよう。ご利用者にとって良い取り組みであれば、全て私が決裁を通すという話をしていました。
職員都合ではなく、あくまでご利用者のためという視点があれば「ダメ」とは言いませんから。

― そのような働きかけをしている際、共に動いてくれる職員の方はいたのですか?

主任やチーフなど役職をもっている職員と想いや考えを共有するところから始めました。
同じ想いの職員が数人いれば、直接私が言わなくても職場全体に浸透しやすいので。
まずは主任やチーフに、ご利用者本位になることはなんでもやってみようと口酸っぱく、言い続けていたので、少しずつ意識は変わっていったように感じます。

そのなかで「記録は何のために必要なのか」ということを考えてもらいました。
「情報共有はご利用者のためであり、職員のためではない」と働きかけをしていたので、システム変更に関しても、職員自身が理解しやすかったのではないでしょうか。

スタッフ間で情報共有をしている写真

― 意識改革から行い、新システムへのアレルギーがないような状態を作ったのですね。働きかけを続けることはとても大切ですが、心が折れそうになりませんでしたか?

そうですね。ただ何かやりたいとき、私が指示しなくても、他の職員が「吉田さんはこう言うだろう」と判断し行動してくれるのが理想だったので、自分の考えを浸透させていくことを大事にしていました。

積極的なコミュニケーションでICT導入がスムーズに

― ケアコラボの導入に関しては、1カ所のグループホームから始められたのですか?

1か所で試してから徐々に増やしていこうと思っていたのですが、結局「やっちゃえ」って、全グループホームで始めました(笑)。
若い職員が使い慣れて教えることができるようになった段階で、年配の職員にも使い始めてもらいました。

ただ想像以上に、年配の職員もスマートフォンには慣れているんですよ。
導入当初、今までスマートフォンを使ったことがないという職員がいて、ケアコラボの記録は難しいかなと懸念していたんです。
でも「使えるようになると楽しいですよ」と私から話をしたほか、ケアコラボを積極的に活用する70歳近くの職員がわざわざ休日に教えに来てくれたことで、現在は普通に使えるようになりました。以前より記録が多くなったぐらいです!

― 吉田さんから職員の方に直接話をしにいったことも大きな決め手ですね。

約40人の職員がいるのですが、なかなか全員と話す機会がありませんでした。
ですので1日1回はそれぞれの職員とコミュニケーションをとることで、信頼関係を築くようにしていました。

積極的にコミュニケーションを取っている写真

― 信頼関係を築けたことで、スムーズにケアコラボを浸透できたのですね。導入直後、職員の方の様子はいかがでしたか?

特に混乱はありませんでした。私自身が記録するとき、あえて写真や良かったことを多めに載せたり、いいねを押すなど、意図的に行うことで「こういう風に記録するんだな」と感じてもらいました。

あとルールは作りませんでした。まずは慣れることが大事なので、フリーに記録してもらいました。絵文字ばかりの記録もありましたが「そういうのはだめですよ」というと、やりづらくなると思うんです。適切じゃない記録などが目立ってきたときに、統一するルールを決めればよいかと。

以前、ご利用者本人が不安定なときや発作時を動画でアップしていることがあったので、「それは本人にとって載せてほしいものなのだろうか?」という必要性に関して話をすることはありました。

スタッフさんがケアコラボを見ながら話をしている写真

日常の様子が切り取られた記録が増えた

― 現在利用していただき2年半以上が経ちました。導入直後と比べ、記録内容や業務環境に変化はありましたか?

記録の量が増えたというのは、間違いないです。良い記録やご利用者にとってプラスの記録が多くなりました。「こういった暴言があった」などばかりではなく、「こういった話をしていた」などなんでもない日常の様子が書かれています。

グループホーム以外の事業所でもケアコラボが導入され、以前は何かあったときのみ記録していたのですが、今は毎日1人のご利用者に対して1つ以上の気付きがあがっています。

また1人の職員が支援にあたるうえで、持つ情報量が変わりました。今までは申し送りを聞くまで分からなかったことが、事前にケアコラボを見れば分かるので、申し送り時間は明らかに減りましたね。ケアコラボに書いているもの以外で、必要なことだけを少なくとも10分以内で申し送りしています。そして余った時間では、職員自身に起こった良いことを発表してもらっています。これも、ご利用者の良いところを見つけることに繋がるので。

メンバー全員で申し送りをしている写真

― 法人自体が新しいことには保守的だったということですが、ケアコラボを導入したことで、組織的に変わった部分はありますか?

若い職員が使いやすいものを取り入れていこうという雰囲気にはなりましたね。

あと他事業所の職員とご利用者の話をしたとき「それケアコラボで見たよ」という会話が多くなりました。複数の事業所を利用されている方の通院予定などについても情報が共有でき、伝達ミスが少なくなりました。

コロナウイルスの時期の情報共有にも役立ちました。色々な部署に連絡しなくてはいけないところ「ケアコラボを見てください」で済みました。事業所間のやり取りだけではなく、保健所への連絡の際にバイタルや発熱した日、食事量などタイムリーな情報が得られるので、ケアコラボじゃなかったら伝達が無理だっただろうなって思いますね。

― ケアコラボをご利用の事業所の中には、コロナウイルスの時期に面会ができなくなったことで、「家族公開」を始めた事業所も多かったようです。

私たちの事業所でも、「家族公開」をすることが最終目標なんです。

以前グループホームの体験利用をする方が他法人の入所施設にいたので、「家族公開」を使い写真や動画で日々の様子を共有していました。法人の垣根を超えちゃいましたね。

― ケアコラボで記録していくなかで、職員の方に変化はありましたか?

記録に対するイメージは変わったようです。

事務所で記録することを見越して早く戻っていたのですが、今は事務所に行く回数が減っています。ご利用者と一緒にいるときにも記録できるようになりましたし。

「記録は面倒くさい」というマイナスイメージだったものが、長文の記録などを読むと「もっと記録して、皆に知ってほしい」というプラスイメージに変化したことが分かります。

― 職員の方の自発性が上がられたのですね!

そうですね。記録ひとつから支援の在り方などについて話ができ、知っていることが前提の支援ができるようになりました。あと、ファイルの送り方や他の活用法を教えてくれることもあります。

私個人としては、電話の数が減りました。以前はほぼ電話で報告が来ていたのですが、導入以降は職員が「重要な記録」としてあげたものに対し、私が「読んだよ」とリアクションをしていました。私が読んだことが分かれば、特に電話しなくても大丈夫、という判断をしてくれるようになりましたね。

ICTの活用で「職員が選ぶ」働きやすい施設を目指したい

― ケアコラボ以外に導入したICTのツールはありますか?

「desknet’s NEO」を導入しました。今後は、勤怠のソフトも入れたいですね。

吉田さんがお話をされている写真

― ICT導入に踏み切れず、何から始めれば良いか分からないという事業所の方へ、吉田さんからメッセージをお願いします!

福祉業界全体的に人材難だからこそ、労働環境を良くしなければいけないと思います。
職員が働きやすい環境を整える=ご利用者の支援に繋がるので、効率性を上げることはマスト。その結果、職員が選ぶ施設になることができるのではないでしょうか。
今後の新卒職員にとっては、生まれたときからパソコンや携帯電話があるので、そこをまず前提に考えなければいけない。そうなるとICTの導入が普通ですよね。
「こうすれば、良い支援ができるのに」がICTの導入で解決するのであれば、積極的にやるべきだと思います。「まずやってみよう。意外とうまくいくかも!」って、私は思っています(笑)。

(企画:ケアコラボ 赤沼 取材:ケアコラボ 赤沼・佐藤 文:山崎めぐみ)

ケアコラボを導入いただいている事業者様の導入事例をまとめています。

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山崎 めぐみ

山崎 めぐみ

デイサービス、グループホームで介護職として勤務。その後特別養護老人ホームへ転職し、メンバーの教育やマネジメントを担当。 介護業界から、出版業界へ挑戦し、編集プロダクションへ就職。雑誌の編集業務と取材をメインに担当。現在は、ライター兼介護職のパラレルワークを実践中。保有資格は介護福祉士、ケアマネジャー。