シリーズ導入準備
後悔しないための介護ソフト導入 5つのステップ
「手書きの記録をやめて介護ソフトを導入したい!」と考える方が増える反面、「導入したものの思った通りの結果が出ない…」という相談もよく受けています。
契約年数が縛られる製品もあり、一度導入するとなかなか切り替えられないことが場合があるため、導入までの検討期間も重要です。
この記事では、後悔しない介護ソフト選定のための、導入までのステップをご紹介します。
ステップ1 課題の洗い出し
介護ソフトの導入は、介護現場における課題解決のための「手段」であり、「目的」にならないようにすることがポイントです。どのような製品が一番効果的かを考えるうえで、現状困っていることは何かを洗い出しましょう。
課題例
- パソコンが空くまで記録ができず、残業が発生し、スタッフの負担になっている
- ご利用者の記録や情報が複数箇所に分散しており、モニタリングがしづらい
- 日々の記録の目的が明確ではないため、記入して終わりになっている
- 記録や情報が他スタッフ・他職種とリアルタイムに共有されず、ヘルプに入りづらい
- 全員が申し送りに目を通しているか把握できず、情報伝達ができているかわからない
- 個人がもつ経験やノウハウが口頭でしか共有されない
ステップ2 目的の明確化
事業所が抱える課題の全体像や優先順位に基づき、導入の目的を明確にすることも大事なポイント。目の前の課題解決だけではなく、中長期的な目線で目的を考えると、導入効果はより高まります。
例えば導入の目的を「記録による現場スタッフの業務負担軽減」とした場合、そこで「削減された時間」を何に使うかを考えます。業務負担を軽減することで、どのようなケアに繋げたいか、また人材の定着や採用コストの削減に繋げたいかなど、目指す環境を明確化させることが重要です。
目的例
- タブレットやスマホを使い、ケアのすき間にいつでも記録ができることで、スタッフが負担と感じている残業時間をなくす
- ご利用者ごとに記録や情報をまとめることで、現行のケアプランに沿った適切なサービスが提供されているかモニタリングしやすいようにする
- ご利用者の日々の記録をデータ化し分析することで、その方の生活リズムに応じたケアを提供する
- ご利用者の記録や情報を、全スタッフがいつでもスムーズに把握・共有できるようにする
- 申し送り事項の共有を素早く確実に行うことで、全員の認識や情報を最新の状態に保つ
- 個人がもつノウハウを蓄積し、スタッフ間で共有することで、全員のスキルの底上げをする
ステップ3 プロジェクトチームの結成
冒頭にも述べている通り、介護ソフトの導入がゴールではなく、課題解決の手段としてどのように活用していくか、また業務の中にどのように組み込んでいくかを検討し導入することで、はじめて効果を実感することができます。
介護ソフトの導入は、法人内や事業所内で体制を整備する必要があるので、プロジェクトチームを結成し、一丸となって取り組むことが大切です。
チームメンバーの選出方法については、法人や事業所などの規模によりさまざまですが、実際にソフトを使用する現場スタッフのユニットリーダーや主任、計画書を作成するケアマネージャーやサービス管理責任者、看護師や理学療法士など、ご利用者に関わるすべての部署でそれぞれ選出するのがおすすめです。
ステップ4 選定の軸となる基準を策定
「ステップ2」で出した目的を達成するにはどのような介護ソフトが必要か、基準を定めましょう。実際の業務中に、製品を利用するシーンを思い浮かべるのも一案です。
以下を参考に、求める機能や要件を書き出しておきましょう。
- 最も重視するポイント
- 最低限求める機能
- 複数社比較する際に何を軸に決めるのか
- 予算
- 導入時期
- サポート体制
介護ソフトの種類やタイプの違いについては、こちらの記事を参照してください。
ステップ5 製品の選定
基準の策定ができたら、実際にソフトの選定をしましょう。
気になるソフトを絞りこむ
インターネットや製品比較サイトで情報を収集し、実際のユーザーのレビューや導入事例などを見てみるのも良いでしょう。
価格や使いやすさは、ウェブサイトや資料だけではわからない場合が多いので、不明点が多く判断ができない場合は、直接話を聞いてみるのがおすすめです。
説明を聞く
気になるソフトがピックアップできたら、実際に話を聞いてみましょう。
事業所の課題解決に繋がるかという点や「ステップ4」での基準を念頭に、説明や提案を受けることで、より詳細にイメージが湧きやすくなります。またメーカーの得意とすることが、事業所の目標とマッチしているかも確認しましょう。
実際の運用に近い形として製品デモで確認するケースもありますので、活用してみるのも良いでしょう。
評価・協議する
資料や説明、デモなどを確認できれば、その中で候補を絞り込んでいく段階へ進みます。
ポイントとして、まず提供しているサービス種別が対応しているか、最低限求める機能は揃っているか、シンプルな設定で現場スタッフが使いやすいかという、課題解決に繋がる要素があるかをチェックします。
また「導入したらそれで終わり」ではなく、改善や開発を重ねているか、サポート体制やフォロー体制は整っているかという点も、継続して利用していけるかを判断する項目になってきます。
そして製品の特徴や会社のビジョンは共感できるものか、また事業所の課題についての掘り下げや寄り添った提案をしてくれるかという項目は、想いを共有できるという点で重要なポイントです。
おわりに
類似した介護ソフトも多く、比較が難しい面もあるかと思います。
ですが、導入目的を明確化すれば比較検討を進めやすく、自分たちに合った介護ソフトを選ぶことができます。
相性の良い製品を長く使うことは、ケアスタッフの安心にもつながるため、今回ご紹介したステップをぜひ実践してみてください。
介護ソフトを使うことで、ご利用者の生活はもちろん、ケアスタッフの日々の仕事がさらに充実したものになるよう、長く使える製品と出会えることを願っています!
ライタープロフィール
山崎めぐみ
デイサービス、グループホームで介護職として勤務。その後特別養護老人ホームへ転職し、メンバーの教育やマネジメントを担当。
介護業界から、出版業界へ挑戦し、編集プロダクションへ就職。雑誌の編集業務と取材をメインに担当。現在は、ライター兼介護職のパラレルワークを実践中。
(保有資格:介護福祉士、ケアマネジャー)