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ジェノグラム(家族構成図)の書き方と記号一覧|チームケアに活かす「関係性」の可視化術

楠本 純平 楠本 純平

「利用者の家族関係が複雑すぎて、なかなか覚えられない」

「久しぶりに面会に来た方が誰なのかわからず、ヒヤッとした」

「記録には『長男』とあるが、実は前妻との子供で、現在の奥様とは折り合いが悪いらしい……」

介護・福祉の現場において、利用者ご本人を取り巻く「人間関係」や「家族の歴史」、「家族関係」を把握することは、重要かつ困難な業務です。
そこで役立つのが「ジェノグラム(家族構成図)」です。

この記事では、ケア記録システム「ケアコラボ」のスタッフが、ジェノグラムの正しい書き方や記号のルールといった基礎知識はもちろん、「現場で活きるジェノグラム活用術」までを徹底解説します。

ジェノグラムとは? 介護・福祉現場で重視される理由

まず、ジェノグラムの定義と、その重要性について解説します。

ジェノグラムの定義と目的

ジェノグラムとは、中心となる対象者を中心に、その家族や親族の構成、血縁・婚姻関係、さらには関係性の質(仲が良い、悪いなど)を特定の記号を用いて図式化したものです。一般的には3世代以上を記述することが望ましいとされています。

もともとは家族療法などの心理学分野で発展したツールですが、現在は介護、看護、医療、児童福祉など、対人援助の現場で標準的に使用されています。

ジェノグラムを作成する主な目的

  1. 家族構成の全体像把握:誰がキーパーソンで、誰が介護力(サポート)を持っているかを一目で理解する。
  2. ライフヒストリーの理解:出生、結婚、離婚、死別などのライフイベントを時系列で俯瞰し、利用者の背景にある歴史を知る。
  3. リスクと課題の発見:虐待のリスク、老老介護、認認介護、家族間の葛藤など、潜在的な課題を可視化する。
  4. 情報の共有効率化:文章で「Aさんの長男のBさんはCさんと結婚しており…」と書くよりも、図のほうが圧倒的に早く、正確に伝わる。

「ジェノグラム」と「エコマップ」の違い

ジェノグラムとセットで語られることが多いのが「エコマップ」です。両者は混同されがちですが、明確な違いがあります。

項目ジェノグラム(家族構成図)エコマップ(社会関係図)
対象範囲家族・親族(内側の関係)社会・地域資源(外側の関係)
主な要素親、配偶者、子、兄弟姉妹、孫など友人、近隣住民、医療機関、行政、趣味のサークル、職場、ボランティアなど
わかること血縁・婚姻関係、家族の病歴、遺伝的要因、家庭内の力関係社会的な孤立度、地域のサポート体制、利用できる社会資源の量
目的家庭内の構造的理解地域社会とのつながりの理解

なぜジェノグラムが必要なのか?

ジェノグラムを通じてご利用者の背景を知っていれば、その方の背景に基づいたアクションが可能となります。
具体的な事例で考えてみましょう。ある日のケア記録に、以下の一行があったとします。

記録:
「14:00、長男様が来所され、ご本人と30分ほど居室で話をされた。手土産にお菓子を持参された。」

ジェノグラムを確認しているかどうかで、この記録に対するスタッフのアクションはこのように変わります。

パターンA:ジェノグラムを見ていない場合

  • スタッフの認識:
    • 「よかったですね。家族孝行な息子さんですね。」
  • アクション:
    • 特になし。お菓子を預かる。

パターンB:ジェノグラムで「長男とは金銭トラブルで不和(ギザギザ線)」と把握している場合

  • スタッフの認識:
    • 「あの長男さんが?なぜ急に?ご本人には適切に伝わっているのだろうか」
  • アクション:
    • すぐに上長や相談員に報告。
    • 面会後のご本人の様子(表情、動揺の有無)を注意深く観察する。
    • 場合によっては、長男が帰った後にご本人に「困ったことはありませんでしたか?」とさりげなく確認する。
    • 記録に「ご本人は面会後、少し疲れた様子で溜息をつかれていた」と追記する。

ジェノグラム(文脈)があるからこそ、記録(事実)の解像度が上がり、リスク回避という具体的なアクションにつながります。

ジェノグラムの基本的な書き方と記号一覧

ここでは、実務ですぐに使える標準的な記号と書き方を解説します。

※ 施設やシステムによって細かなローカルルールが存在する場合もありますが、ここでは日本国内の福祉現場で広く通用する標準的な表記を紹介します。

1. 人物を表す基本記号

まずは人物そのものを表す記号です。

要素記号備考
男性□(四角)
女性◯(丸)
不明・その他◇(ひし形)性別不明や胎児など
本人(対象者)記号を二重枠にするか、太枠で強調する男性:二重の四角(または太線の四角)
女性:二重の丸(または太線の丸)
死亡記号の中に「×」または塗りつぶし一般的には記号の中に「×」を書くことが多い。記号の下に「没年」や「享年」を記載。
年齢記号の中、または記号の下に記載

記号の中に年齢を書くスペースがない場合は、記号の下に名前と併記するのが一般的です。

2. 関係線(婚姻・血縁など)

人物と人物をつなぐ線の書き方です。

関係性記号・線の引き方
婚姻関係(夫婦)男性(夫)を左、女性(妻)を右に配置し、「コの字」型の実線で結ぶ。
事実婚・内縁関係点線(破線)で結ぶ。
別居婚姻関係の線(横棒)の上に、斜線(/)を1本入れる。
離婚婚姻関係の線(横棒)の上に、斜線(//)を2本入れる。
死別生存している配偶者と、死亡した(×印の入った)配偶者を実線で結ぶ。
親子関係夫婦を結ぶ線の中央から下に線を引き、子供の記号につなげる。
兄弟姉妹親から伸びた線を分岐させ、左から右へ「年長順(生まれた順)」に配置する。
双子親から一点で分岐させ、山型(∧)のように線を引いてそれぞれの記号につなげる。一卵性の場合はさらに横線でつなぐこともある。

3. 関係性の質(心理的距離)

家族の関係性が良好か、険悪かを表す線です。人物同士を直線で結び、その線種で表現します。

関係性記号補足事項
良好・通常実線
非常に良好二重線または三重線過干渉や共依存の可能性を示す場合もあります。
疎遠・関心が薄い点線
不和・葛藤・敵対ギザギザ線、または線の上に「×」や「|」虐待やDVが疑われる場合や、介護方針で揉めている関係性を示す際に重要です。
融和・修復線の上に矢印や記号(ローカルルール)関係が改善傾向にあることを示します。

4. 同居・別居の表現

  • 一つ屋根の下で暮らしているメンバー全体を、大きな点線または実線で囲みます。
  • これにより、誰が「世帯内」におり、誰が「世帯外(別居)」なのかが一目でわかります。

作成の基本的なステップ

  1. 本人の配置:まず用紙の中央(またはやや下)に本人を配置します。
  2. 配偶者の配置:本人の横に配偶者を配置し、婚姻線で結びます。再婚歴がある場合は、時系列(左から右)に注意します。
  3. 子供の配置:夫婦の線から下に線を伸ばし、左から右へ年齢順に子供を配置します。
  4. 親・兄弟の配置:本人の上に両親を配置し、本人の横(同じレベル)に本人の兄弟姉妹を配置します。
  5. 情報の肉付け:名前、年齢、職業、病歴、死亡日などの文字情報を追記します。
  6. 関係性の記述:葛藤や密着などの関係線を書き込みます。
  7. 同居の囲み:現在同居している範囲を囲みます。

よくある「書き方」の悩みと解決策 Q&A

基本ルールは上記の通りですが、実際の現場では「こんな時はどう書けばいいの?」と迷う複雑なケースが多々あります。ここでは、悩みやすいポイントをQ&A形式で解説します。

Q. どこまで詳しく書くべき? プライバシーへの配慮は?

A. 「ケアに必要な範囲」に留め、開示レベルを意識します。

ジェノグラムは究極の個人情報です。隠し子、犯罪歴、深刻な確執など、デリケートな情報が含まれることがあります。
原則として、「アセスメントやケアの方針決定に必要な情報」に限って記載します。単なる噂話レベルの情報は書くべきではありません。

また、システムや紙の管理においては、閲覧権限を設定することが重要です。

Q. 複雑すぎて家系図の線が引けません。

A. 「現在の関係」を優先し、過去は番号や注釈で補足しましょう。

無理にすべてを一箇所に描こうとすると、線が交錯して解読不能になります。ジェノグラムの第一義は「現在の支援体制の把握」です。

現在の配偶者やパートナーを優先して描き、前妻・前夫については、脇に小さく描くか、備考欄に「※1:1990〜1995年 前妻A子との間に長男B男あり(別居)」のようにテキストで補足するのが現実的です。

Q. 家族と「絶縁状態」の場合はどう表現しますか?

A. 関係線(ギザギザや二重斜線)+「絶縁」の文字記載で明確にします。

単なる「疎遠(点線)」と「絶縁(意図的に関わりを断っている)」は、ケアのリスク管理上、全く意味が異なります。

関係線として「不和(ギザギザ線)」や「切断(二重線に斜線)」を引き、さらにその線の上に「絶縁中」「接触禁止」といった文字を明記しましょう。
これは、誤って家族へ連絡してしまうトラブル(特にDV被害ケースなど)を防ぐために重要です。

Q. 亡くなった家族も書く必要はありますか?

A. 可能な限り書くべきです。

「亡くなった方はケアに関係ない」わけではありません。
例えば、「昨年、長年連れ添った妻を亡くしたばかり」であれば、その喪失感(グリーフ)が現在の意欲低下の原因かもしれません。また、「若くして亡くなった兄」の存在が、本人の死生観に影響を与えていることもあります。

死亡した家族は「×」印で示されますが、それは「不在」ではなく「本人の歴史の一部」として存在しています。

ジェノグラム作成を「業務負担」にしないために

ジェノグラムの有用性は理解していても「作成が面倒」「更新する暇がない」という声もあります。この「業務負担」の原因と解決策を考えます。

手書き・Excel管理の限界

多くの事業所では、手書きの用紙をスキャンしたり、Excelの「オートシェイプ(図形描画)」機能を駆使してジェノグラムを作成しています。しかし、これには限界があります。

  1. 修正が困難:Excelで図形をグループ化していても、一人追加するだけで全体のレイアウトが崩れ、線のつなぎ直しに時間がかかる……という「名もなき事務作業」が発生します。
  2. 情報が風化する:作成が大変だからこそ、「入所時」に作ったきり、一度も更新されません。その結果、すでに亡くなった方が「生存」になっていたり、キーパーソンが変わっているのに反映されていなかったりします。
  3. 共有されない:相談員のPCの中や、紙ファイルの奥底にあり、現場の介護職員やヘルパーが見たい時にすぐに見られません。

システム化・デジタル化のメリット

専用のシステム(介護ソフトなど)には、ジェノグラム作成機能が含まれているものがあります。デジタル化のメリットは「描画の楽さ」だけではありません。

  • スマホ・タブレットでの閲覧:訪問先やベッドサイドで、すぐに家族構成を確認できます。
  • チーム編集:誰か一人の担当者だけでなく、情報を知ったスタッフがすぐに修正・更新できます。

チーム全体で「関係性」を更新し続ける重要性

ジェノグラム作成を「相談員の仕事」と決めつけるのはもったいないことです。

送迎時の車内での会話、面会時の様子、電話対応の雰囲気……。現場のスタッフこそが、最新の家族関係のヒントを持っています。

「描くこと」を目的にせず、「チームで情報を持ち寄って更新し続けること」を業務フローに組み込むことが、負担感を減らし、活用度を高めるコツです。

日々の記録からジェノグラムを更新し続ける

また、日々の記録からジェノグラムを更新していく流れもあります。

家族関係は変化します。「不和」だった親子が、孫の誕生をきっかけに和解することもあります。逆に、介護負担が重なり「良好」だった関係がギスギスしてくることもあります。

【アセスメントとモニタリングの循環】

  1. アセスメント:入所時、ジェノグラムで「娘とは疎遠」と描く。
  2. 日々の記録:日々の記録で「最近、娘さんから頻繁に洗濯物が届くようになった」「電話で楽しそうに話している」という事実が蓄積される。
  3. 再アセスメント(更新):「関係性は改善傾向にあるようだ」と判断し、ジェノグラムの点線を実線に書き換える。または、注釈に「〇〇年頃から交流再開」と追記する。

ご利用者の家族関係を正確に捉えられていると、貴重な協力者(ケアの資源)の存在が浮かび上がります。

タイムライン形式だからこそ見える「家族のストーリー」

弊社が提供するケアコラボの最大の特徴は、SNSのようなタイムライン形式の記録です。

スタッフがスマホで投稿した日々の様子(写真やコメント)が時系列に流れていきます。そして、その画面からワンタップで「ご利用者情報(家族情報・ジェノグラム情報)」にアクセスできます。

わざわざ分厚いファイルを取りに行かなくても、スマホ一つで「この面会に来ている人は誰だっけ?」「お孫さんかな?」と確認できるスピード感。この「情報の近さ」が、深い気づきを生みます。

まとめ:ジェノグラムを「生きた情報」にするために

ジェノグラムは、綺麗に図を描くことがゴールではありません。

記号の一つ一つに込められた「人間関係」や「歴史」を読み解き、日々のケアに落とし込むことが本来の目的です。

  • 正しい書き方を知る
  • 日々の記録とリンクさせる
  • チームで更新し続ける

この3つを意識するとご利用者に対する理解はより深まります。

もし、現在の現場で「ジェノグラムの管理が大変」「記録とうまく連動していない」とお悩みであれば、ぜひ一度、ケアコラボにお問い合わせください。

「描いて終わり」ではない、未来につながるケア記録を、私たちと一緒に始めませんか?

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楠本 純平

楠本 純平

ケアコラボでは、インサイドセールス、プロダクトオーナー、企画など、幅広い役割を経験。 現在は「何でも屋」として、福祉の現場で日々奮闘されるユーザーの皆さまが「ケアコラボを使ってよかった」と感じていただける瞬間を少しでも増やすため、さまざまな領域に関わっています。 志高く、あたたかなケアコラボユーザーの皆さまから学ばせていただくことも多く、日々刺激と気づきをもらっています。

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