シリーズ活用事例
「20歳になったときの姿」を見据えて。児童発達支援の現場における「ケアコラボ」の定着と活用のいま
福祉現場のICT化が進むなか、新しいシステムの導入を検討しつつも、「なかなか使いこなせず、結局もとの記録方法に戻ってしまうのではないか…」という不安をもつ方も多いのではないでしょうか。
そのような導入後の「定着」に悩みをもつ方に向けて、岡山県で児童発達支援事業所や放課後等デイサービス等を提供される社会福祉法人クムレさまの事例をご紹介します。
約240名のスタッフがケアコラボをお使いのクムレさまでは、ケアコラボの記録が日々の活動記録だけでなく、ご家族との間をつなぐ貴重な資産として根付いています。
そんなケアコラボが現場になじみ、どのように定着していくかの道のりや、現場でのリアルな活用方法についてお伺いしました。

「ともに育ち、ともに生きる」を法人理念に掲げ、共生社会と多様性を創立時より大切にしている。また事業所として「自立、尊厳、ハビリ」を大切にしながらご利用者への支援を行っている。
児童発達支援センタークムレ 児童発達支援管理責任者 中村様
言語聴覚士 川嶋様
保育士 赤塚様
「先を見据えた支援」を、地域とご家族と共に
― まず、クムレさまの理念と地域での役割について教えてください。
赤塚様:私たちは「共に育ち、共に生きる」という理念のもと、お子さまが生まれてから成人するまで、地域の方々と共にご本人らしく日々を過ごせるようサポートしています。私たちのいる児童発達支援センタークムレは、岡山県倉敷市水島に所在しているので、この水島という地域の中で、ご家族の方と共に20歳になった時の、先を見据えた支援を大切にしています。
ケアコラボは全部で35ある事業所のうち、保育園をのぞいた障がい者・障がい児の方が利用される23の事業所で使用しており、約240名のスタッフが利用しています。
― 支援を行う上で、スタッフ間で共通して大切にしている考え方はありますか?
赤塚様:お子さまの主体性を大切にしながら、ご本人の立場に立って考えて支援するということを心がけています。先ほどもお伝えした「先を見据えた支援」を、スタッフ全員で大切にしています。
一方通行の連絡帳と、毎日1〜2時間の残業
― 導入前、記録や情報共有にはどのような課題があったのでしょうか。
中村様:以前はすべて手書きの連絡帳でした。手書きだと、どうしても私たちからの一方的な報告になりがちで、ご家族との密な双方向のやり取りが難しいというもどかしさがありました。また、過去の記録を確認する際も、わざわざ倉庫まで行って書類を探さなければならず、情報の活用に時間がかかっていました。
手書きで記録をしていた時は、ご利用者1人の記録に1日30分ほどかかり、さらに毎月の振り返り計画を立てる際も、手書きのメモをパソコンに打ち直すという二度手間が発生していました。加えて、お子さまが帰宅された後に正規職員が残って記録を書くため、毎日1〜2時間の残業が発生していました。
また、送迎の時間はバタバタしていてゆっくりお話しできないことも多く、保護者さまとのコミュニケーションがなかなか取れずもどかしさを感じていました。
「まずやってみよう」スタッフ全員が使いこなすまでの道のり
― ケアコラボの定着を図る上で、どのような工夫をされましたか?
中村様:導入時、法人から各事業所に運用方法の説明書が配布されました。各事業所の管理者がそれを参考にしながらより分かりやすい資料をそれぞれ作成し、スタッフに周知しました。「まずはやってみましょう!わかりづらいことがあったら教えてくださいね。」というスタンスで取り組みました。
スタッフの年代も幅広いので、紙の記録からスマホやパソコンでの記録に変わったことで苦戦しているスタッフもいましたが、「記録をするときはこうやって、これをコピーして貼り付けて…」のような形で詳しく解説した資料を準備した点が良かったです。
― システム導入時、操作が苦手なスタッフへのフォローはどうされましたか?
中村様:40代後半以上のスタッフの中には、習得に半年ほどかかるケースもありました。そこは、先に操作に慣れたスタッフが日常的にフォローすることで解決しました。年代にもよりますが、40代半ば以降の方は大体半年くらい、下の世代の方は普段からスマホを使い慣れているので3ヵ月くらいで慣れたと思います。
苦手意識があったスタッフも、ケアコラボを導入することで、スマホやパソコン自体の操作スキルが上がったのは良かったですね。

― 運用を開始して苦労した点はありましたか?
中村様:誤って記録を公開するなどして、保護者さまに特定の記録が見えてしまっていないだろうか…といった細かな不安はありました。ただ、実際にそうしたトラブルが起きたわけではなく、慣れるにつれて不安も自然と解消されていきました。
また、個別支援計画書の入力方法は、最初は少し慣れるのに時間がかかりましたが、今では問題なく使えています。「前のシステムの方が良かった」という声は一切出ませんでした。
― ご家族登録についてはいかがですか?
中村様:基本的にすべての保護者さまに登録をお願いしています。今までに「登録したくない」と仰った方はいませんでした。
招待メールからの登録がうまくいかない方がたまにいらっしゃいますが、その際は個別でサポートしているので、100%のご家族さまが登録して使えています。

職種ごとのケアコラボの使い方のリアル
― 実際に現場では、どのようなスケジュールでケアコラボを使っていますか?
赤塚様:直接支援を担っている保育士は、まず朝一番に保護者の皆さまからの欠席連絡や、前日の連絡帳への返信を5〜10分ほどで確認します。日中は、活動の様子をスマホで撮影し「今日はこんな狙いで、こんな活動をしました」という活動記録を、写真付きでリアルタイムに発信します。これが10分くらいの作業時間です。
夕方に再度保護者さまとのやり取りを確認し、1日のトータル使用時間は30分程度です。
川嶋様: 言語聴覚士の私の場合は、個別訓練を実施したり、クラスに入って支援したりしています。支援が終わった後にパソコンで詳細な記録を入力したり、保護者さまからのコメントに返信したりしています。
1日に4人から、多い時で10人前後の記録を行うため、トータルで2時間ほどケアコラボを使う日もあります。

― 記録する際は、どんな端末をお使いですか?
赤塚様:現場にいるときはスマホで記録しています。お子さまが帰宅してからは、スタッフ室でパソコンを使っています。
中村様:私も支援中は写真や動画をスマホで撮影しています。その後スタッフ室に戻り、文章を入力する際はパソコンで記録しています。現場ではスマホ、スタッフ室ではパソコンと端末を使い分けることで、支援の合間にサッと記録を済ませられる体制を整えています。
― 特にお気に入りの機能はありますか?
赤塚様:「申し送り」機能は、複数のスタッフにまとめて情報を共有できるのでとても便利だと思っています。追記もできますし、見返しやすいので嬉しいですよね。
中村様:外部の関係機関からお子さまに関する情報が得られた時に、関係スタッフへ周知するのが一番多い使い方です。
川嶋様:専門職の立場では、特に「動画」機能に助けられています。私自身5~6事業所ほど見ているのですが、毎回事業所まで足を運ぶと時間が取られてしまうため、ケアコラボ上でのやり取りは非常に助かっています。
たとえば、食事場面で困りごとがある際、事前に現地のスタッフに動画をアップしてもらうことで、訪問前に「このお口の動きなら、次はこういう形態の食事を試してみてもらえませんか?」と具体的な打ち合わせができます。
また、特定のご利用者の動画に対して専門職グループ内で「この方の○○について悩んでいるのだけど、ちょっと動画を観てくれない?」というように、オンラインカンファレンスのようなやり取りをしながら、お互いに知恵を出し合っています。
中村様:以前は電話や実際に現地へ赴くことでしか状況がわかりませんでした。もしくは書面ですね。今はケアコラボ上でその場で「ケアの様子や変化・推移」が確認できるため、離れた事業所の現場スタッフとのやり取りが非常にスピーディになっています。
川嶋様:例えば食事形態の変更であっても、その後の様子まで現場スタッフが共有してくれるので、「うまくいってよかったな」とも思えて良いですね。


残業が半分以下に。浮いた時間は「支援の準備」へ
― 導入後、スタッフの身体的・精神的な負担はどのように変わりましたか?
赤塚様:スマホで記録できるようになったことで、空いた時間に記録ができるようになり、身体的な負担が減りました。また、嘱託の先生にも記録を書いていただけるのが嬉しい点です。
表示自体や機能もすごく分かりやすく、記録業務にかかる時間がだいぶ減りました。
中村様:以前はお子さまが帰宅された後に正規職員が残って記録を書いていましたが、ケアコラボにしてからは日中に記録が打てるようになったので、驚くべきことに、以前は毎日1〜2時間発生していた記録のための残業が、現在は半分以下になっています。
日々の記録がすべてデータとして残っているため、必要な箇所をコピー&ペーストするだけで保護者さまへの共有資料が完成します。浮いた時間は、お子さまが使う新しい玩具の作成や、部屋の環境設定、公園などの地域資源の下調べに充てられるようになりました。事務作業ではなく、本来やりたかった「支援の準備」に時間を使えるようになったことが、スタッフの精神的な余裕にも繋がっています。
川嶋様:数年前の記録もすぐに検索できるため、後任の担当者であっても「その子がどういう歩みをしてきたか」を深く理解した上で支援に入れます。

中村様:ケアコラボを導入してからは、お子さまの様子をリアルタイムでお伝えできるようになりました。これにより、ご家族とスタッフの支援に対する考え方や関わり方をより統一できるようになりました。1家庭でご招待できる人数に上限を設けていないため、ご両親だけでなく祖父母の方もケアコラボにご招待しており、お子さまの笑顔を見て喜ばれることも多いです。
赤塚様:以前の紙の連絡帳では写真をお見せすることができませんでした。ケアコラボでは毎日の様子を写真付きで共有できるので、「仕事で見ることがなかなかできないお子さまの笑顔が見られて嬉しい」というお声をいただいています。毎日コメントをくださる保護者さまもいれば、まとめてコメントくださる方もいますが、コメントしてくださる率はとても高いです。
中村様:送迎の時間はバタバタしていてゆっくりお話しできないことも多いですが、ケアコラボなら保護者さまも落ち着いた時間にご自身の気持ちを綴ってくださいます。ご家族を「一つのチーム」として一緒に支援していく土壌が、デジタルを通じてより強固になったと感じています。
― 組織的な変化はいかがでしょうか?
中村様:ご利用者さまが同じ法人の別の事業所に移ることがあります。その場合はケアコラボの中に情報があるため、「前はこのような形で支援していたのか」と理解できますし、事業所を超えた同じチームとして、共にご利用者を支援していくという気持ちが一層強くなったように感じます。

使い続けられる理由は「楽しさ」にある
― ケアコラボの導入を検討している方に向けて、コツやメッセージをお願いします。
赤塚様:ご家族さまとのやり取りがとてもスムーズになりますよ。たとえばお子さまがお怪我をされた際も、患部の写真をケアコラボにアップしてからお電話することで、「ちょっと写真をご確認いただけますか」とその場で一緒に状況を把握していただけます。
川嶋様:写真や動画で記録できるので、お子さまの成長がとにかくよくわかります。支援に関わるスタッフにとって、そうしたお子さまの成長が日々の励みになっています。楽しみながらシステムを使う。それが、長く使い続けられるコツではないでしょうか。
中村様:ケアコラボを入れたことで、保護者さまがご自身の気持ちをコメントで伝えてくださったり、時にはヘルプサインを出してくださるようになりました。私たちはお子さまはもちろん、ご家族さまも支援したいと考えているので、そういった家族支援の部分を密にできるようになったことがとても嬉しいです。ご家族ありきのお子さまだと思っているので、そこへの支援が実現できているケアコラボにとても感謝しています。
記録は、ご利用者とご家族にとって「一生の宝物」になる
― 今後、ケアコラボをどのように活用していきたいですか?
中村様:今はまだ支援者側からの発信が中心ですが、ゆくゆくは保護者さまからも日常の気づきを気軽に発信していただき、双方向のやり取りをもっと深めていきたいです。
「私たちもご家族も、みんな味方だよ」「同じチームだよ」ということを実現できたら良いと思っているので、その一つとしてケアコラボをさらに活用していきたいと考えています。
ケアコラボの記録は、私たちスタッフにとっての励みであることはもちろん、何よりお子さまとご家族にとっての「貴重な資産」だと捉えています。
保護者さまの中には、記録を印刷して大切に保管されている方もいます。いつかお子さまが大きくなった時に、「自分はこんなにたくさんの人に支えられ、頑張って成長してきたんだ」と確認できる成長の証として、この記録を一生の宝物にしてもらえたら嬉しいです。

新しいシステムを導入し、日々の業務のあり方を変えるのは決して簡単なことではありません。導入を検討されるなかで、現場への定着に不安を感じる方も多くいらっしゃるのは、とても自然なことだと思います。しかし、その先にある「未来」に目を向けてみると、そこには皆さまが本当に実践したいケアの形や、組織のあり方が待っているはずです。
今回のクムレさまのお話は、「システムを導入するか否か…」の迷いを超えて、どのように運用し、定着させていったか、そしてその先にどんな素晴らしい効果があったのかを、具体的に想像させてくれる事例でした。
私たちケアコラボは、「ケアの現場に、共創の文化を育む」というミッションを掲げています。記録はただの業務ではなく、人と人をつなぐもの。そんな私たちの理想を、クムレさまはまさにケア記録を通じて体現してくださっていました。
そのつながりは、お子さまと現場スタッフ・専門職の間だけにとどまらず、スタッフと保護者さま、スタッフと嘱託医、同じ法人の離れた事業所同士など、ケアコラボを介して豊かな関係が結ばれていました。そして、お子さまの記録が大切な資産となり、未来へとつながっていく。その素晴らしい循環に、深く心を動かされたインタビューでした。
社会福祉法人クムレの皆さま、この度は貴重なお話をありがとうございました!
