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「何もしてあげられていない」から、「いっしょに介護しているみたい」へ|ケアコラボ体験談・家族編

岡部 拓哉 岡部 拓哉
「何もしてあげられていない」から、「いっしょに介護しているみたい」へ|ケアコラボ体験談・家族編

杜の家やしお(社会福祉法人 福祉楽団)では、介護記録のために「ケアコラボ」を利用しています。

ケアコラボでは、スタッフが投稿した介護記録や日々の入所者の様子に対して、入所者の家族がコメントをつけられる「家族共有機能」があります。

杜の家やしおでも、2018年4月から、介護記録や日々の投稿を家族に向けて公開することにしました。これにより、介護スタッフと家族が、投稿を通してコミュニケーションが取れるようになったのです。

今回は、杜の家やしおに入所している家族をもつIさんに、ケアコラボを使ってみて感じたことをインタビューしてみます。

杜の家やしおの写真

画像引用:杜の家やしお(社会福祉法人 福祉楽団)HP

ケアコラボを使う前は「気持ちの面でもすこし距離を感じていた」

都内に住むIさんは、埼玉県にある杜の家やしおに、月に2~3回程度訪ねています。まずは、ケアコラボの投稿が家族に公開される前のお話から伺いました。

杜の家やしおに入所している母親をもつIさんと、社会福祉法人福祉楽団のソーシャルワークチーム ジョブマネージャーである中村麻里さん
杜の家やしおに入所している母親をもつIさん(写真手前)と、社会福祉法人福祉楽団のソーシャルワークチーム ジョブマネージャーである中村麻里さん(写真奥)

ーケアコラボを使う前はどうでしたか?

自宅からここまで1時間以上かかりますし、来るときは兄に送迎を頼んでいるので、母を訪ねることができるのは月に2~3回程度です。

頻繁に来られるわけではないので、スタッフの方となかなかじっくりお話する機会もなく、どのような方が母のお世話をしてくださっているのか、あまりよく知らなかったんです。

また、身内にこうした施設の利用経験者がいなかったので、ふだん母がどのようなケアをしてもらっているのかも、よく分からない状態でした。

ですから、物理的な距離もありましたが、気持ちの面でもすこし距離を感じていましたね。

いっしょに介護をしているような気持ち

ーケアコラボが公開されてからどのように変わりましたか?

母の体調や日々の様子を頻繁に投稿してくださるのを見ていると、スタッフさんといっしょに母を見守っているような気持ちになりますね。

投稿された写真や動画を見て、「元気そうだな」「楽しそうだな」と感じて嬉しくなることもよくあります。

ケアコラボのタイムラインの画像
ケアコラボなら、スタッフが投稿した画像や動画を、離れて暮らす家族が見ることも可能だ

また、どのスタッフさんが投稿してくださったのかも見られるので、なかなか会えないスタッフさんに対しても、親しい気持ちになりますね。最近では、スタッフの皆さんといっしょに介護をしているような気持ちになることもあります。

ケアコラボを使う前に比べて、スタッフさんにも母にも、より近づけたと思います。母が自宅で一人暮らしをしているときよりも、しょっちゅう会っているような感じがするほどです。

「何もしてあげられていない」罪悪感があった

ーご自宅にいたときは、どのくらい会っていたんですか?

実は、今よりも回数としては少なかったんです。というのも、一人暮らししている母を見ると、「何もしてあげられていないなあ」という罪悪感を抱いてしまって、足が遠のいてしまっていたからです。

母自身は「一人暮らしが気楽でいいのよ」と言っていましたし、そのとおりのところもあったとは思いますが、ついかわいそうに思えてしまって、自責の念に駆られることも少なくありませんでした。

私が住んでいる場所に母を呼び寄せたこともありますが、母が環境の変化に慣れず、認知症の症状が悪化したこともあり、同居には至らず一人暮らしに戻ったんです。

そうこうしているうちに、年齢とともに一人暮らしが難しくなってきたので、一旦入院したあと、ここに入所したという経緯があります。

一人暮らしをしていたときや入院していたときに比べて、今の母は本当に幸せそうです。もともとよく笑う人でしたが、ここに入所してからは、以前にも増して笑顔が増えたと感じます。母が幸せそうにしている様子を、ケアコラボを通して私も見ることができるので、私自身も幸せになりますね。

これまで、「母の最期のときを幸せにしてあげられない」という自責の念や罪悪感を感じていましたが、今では「ここに入所できて、母の最期が幸せに彩られて本当によかった」と思っています。母はもちろん、私や私たち家族まで救われた気分です。

ケアコラボの投稿を見ていても、スタッフの皆さんが仕事のレベルを超えて素晴らしいケアをしてくださるのが伝わるので、心から感謝しています。

日常のケアが感謝の対象に

ーそう感じた印象的なエピソードがあれば教えてください。

ご家族Iさんと中村さんが会話している写真
ケアコラボの投稿を見ながら、「最近はこんなことがありましたよね」と話すお二人

以前、あるスタッフさんが投稿してくださったことをご紹介します。

母がパンを食べようとしたとき、「ジャムはいらない」とスタッフさんに言ったそうなんです。それに対してスタッフさんが、「ジャムをつけるとおいしいですよ」と言ってくださり、それを聞いて母もジャムをつけてパンを食べたのだそうです。

ふつうであれば、「ジャムはいらない」といわれたら、「そうですか」とそのまま流してしまうと思うんですが、母のためを思ってジャムを勧めてくださるところに、本当に心を込めて母に接してくださっているんだなと感動しました。

そんなささいな日常のエピソードを知ることができるのも、ケアコラボならではだと思います。

ー逆に、ケアコラボを使っていてトラブルがあったことはありますか?

トラブルというわけではありませんが、使い始めたばかりのころに、すこし戸惑ったことがありましたね。

ある日、いつものようにケアコラボを見ていると、体調の記録が赤色で強調されていたことがありました。「なんだろう?」と思って見てみると、いつもより血圧が低いと記載してあったんです。

それを見てびっくりしてしまって、その日は万が一のことを考えて外出は控え、ずっと自宅にいてケアコラボを見ていましたね。

今でこそ、母くらいの年齢だと血圧が下がることはよくあると知っているのですが、当時はそういった知識もなかったために、つい慌ててしまいました。

PCはもちろんスマホでも見守り

ー普段のケアコラボの利用方法を教えてください。

私は普段から朝と夜にパソコンを見る習慣がありましたが、ケアコラボが始まってからは、それ以外の時間でも「今、お母さん何しているのかな」とケアコラボをのぞくことがありますね。

楽しそうな写真や動画が載っていると嬉しくなりますし、逆に体調が悪かったと書いてあるとちょっと落ち込んだり心配したりもします。そういう記録を見て「やっぱり年なんだな」と実感しますね。

ケアコラボのバイタル機能のグラフ表示
血圧や体温など日々の記録も見ることができる

最近では、スマホにもアプリを入れて、気になったときに見ています。

ー他のご家族の反応はいかがですか?

ケアコラボに参加しているのは、私の他に兄がいます。兄は私のように積極的にコメントを残したりはしませんが、投稿されたものはすべて見ていますよ。さっきも車のなかで、母の血圧について話していました。コメントはしなくとも、ケアコラボの投稿にはいつも支えられています。

ーありがとうございます。最後にメッセージをお願いします。

こちらに入所してから、母も幸せになりましたが、家族である私たちも幸せになりました。

これまで、老齢の母に対して「もっとちゃんとやってあげなきゃ、でもなかなかできない」という気持ちが常にあり、心が晴れることはありませんでした。

しかし、こちらに入所して日々母の幸せそうな様子や心のこもったケアを日々見せていただき、本当に安心できるようになりました。親の介護に対して、自責の念や罪悪感を抱いている人は多いはずです。介護される人はもちろん、その周りにいる家族まで幸せになれる介護やツールが、もっと広まっていけばいいと思います。

ーありがとうございました。

岡部 拓哉

岡部 拓哉

2017年にケアコラボ一人目の社員として入社。様々な業務を経験したのち、2022年に卒業。現在は株式会社グロースハックラボを設立し、ケアコラボを含めた多数の企業のウェブマーケティングを支援している。

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