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シリーズケアコラボの視点

【2027年度報酬改定】厚労省が示した「5つの基本的な視点」を読む──改定率が決まる前に、確認しておきたいこと

赤沼 紗織 赤沼 紗織

2027年度(令和9年度)の介護報酬改定。改定率が決まるのは2026年(令和8年)12月で、単位数が見えてくるのは年明け以降です。

ただ、「どういう考え方で改定するか」は、すでに資料の形で出ています。2026年(令和8年)9月30日の第268回社会保障審議会介護給付費分科会に示された「令和9年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)」です。

そして10月に入ってからは、サービス種類別の「論点及び対応案」も順次示され始めました。この記事では、5つの視点の中身と、それが各論にどう降りてきているのかを整理します。

シリーズ「2027年度 報酬改定を読む」総論

この記事は、2027年度(令和9年度)の介護報酬改定を読み解くシリーズの総論です。厚労省が示した「5つの基本的な視点」で改定の全体像を整理します。個別の論点は、各論の記事で1つずつ詳しく見ていきます(シリーズの見取り図)。

この記事の3つのポイント

1

9月30日に「5つの基本的な視点(案)」が提示された。決定ではなく、今後の審議報告に盛り込まれていく段階

2

10月の分科会では、サービスごとの「論点及び対応案」が示され始めている。単位数は未定だが、何を評価するかの形は見え始めている

3

視点の中に「AI等の介護テクノロジーの活用」「タスクシフト/シェア」「報酬体系の整理・簡素化」が並ぶ。記録・事務の話が改定の柱の側にある

1. まず、確定している事実を整理します

根拠となる資料は次の2本です。

スケジュールは、厚生労働省が示した検討の進め方(第256回分科会 資料4)に沿って進んでいます。

時期内容
令和8年4月〜夏頃主な論点について議論。事業者団体等からのヒアリング
令和8年10〜12月頃具体的な方向性について議論
令和8年12月中報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・とりまとめ(基準は先行してとりまとめ)
令和9年1月頃介護報酬改定案の諮問・答申
令和9年度介護報酬改定までの流れ。令和8年4月〜夏頃に主な論点の議論と団体ヒアリング、10〜12月頃に具体的な方向性の議論(いま、ここ)、12月中にとりまとめと改定率の決定、令和9年1月頃に諮問・答申、4月に施行

改定率そのものは、12月の予算編成の中で決まります。なお運営基準に関する事項は、地方自治体の条例改正に必要な期間を踏まえ、先行してとりまとめられる予定です。

令和9年度改定は、令和6年度に続く通常の定期改定という位置づけです。令和8年度は処遇改善等を目的とした期中改定でした。

2. 9月30日に示された「5つの基本的な視点(案)」

資料では、まず4つの基本認識が示されています。物価・賃金の上昇と公定価格であること、地域ごとに異なる高齢化と人口減少の進み方、複雑化・多様化する介護ニーズ、生産年齢人口の減少。そのうえで、保険料負担の増加への懸念にも留意が必要とされています。

これを受けて、視点は次の5つに整理されました。

① 物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善

経営状況や賃上げの状況を把握したうえで、物価・賃金の上昇等を介護報酬に適切に反映し、経営の安定を図るとともに、他職種と遜色のない処遇改善を実現する、とされています。

② 人口減少・サービス需要に応じたサービス提供体制の構築

令和8年6月に成立した社会福祉法等の改正法で創設された「特定地域サービス」が確実に機能するよう、サービス提供のあり方、人員配置基準、報酬を検討する。あわせて中山間地域の加算のあり方を見直し、地域における協働化、タスクシフト/シェアを推進する、という内容です。

③ 地域包括ケアシステムの深化

医療・介護連携、生活期のリハビリテーション、災害時等の業務継続、高齢者虐待防止、認知症高齢者の社会参加と地域生活を支える環境整備、生活支援・権利擁護。あわせて有料老人ホームのサービスの質・運営の透明性確保。さらに、LIFEの一層の活用等を通じた科学的介護の推進が挙げられています。

④ 職場環境の改善と生産性の向上を通じたサービスの質の向上及び介護人材の確保

多様な介護人材の確保・定着、職員の負担軽減や職場環境の改善。そして「居宅系サービスも含めたAI等の介護テクノロジーの活用、タスクシフト/シェアなどを通じた生産性向上」と明記されています。

令和6年度改定で新設された生産性向上推進体制加算は施設系サービスが対象でした。そこに「居宅系サービスも含めた」という言葉が入っている点は、訪問系・通所系の事業所にとって見落とせないところです。

⑤ 制度の安定性・持続可能性の確保

限られた財源を有効に活用し、サービス提供の実態をきめ細かく把握したうえで、介護報酬の評価の適正化・重点化を推進し、報酬体系を整理・簡素化する、とされています。

「適正化・重点化」と「簡素化」が同じ視点の中に並んでいます。算定率の低い加算の整理は、令和6年度改定の審議報告でも繰り返し指摘されてきた論点です。

3. 「率」より「どこに重点が置かれるか」

前回、2026年(令和8年)6月の臨時改定では、介護+2.03%/障害+1.84%という改定率でした。賃上げは三層構造で、月1.0万円(介護従事者全体)+月0.7万円(生産性向上・協働化に取り組む事業者への上乗せ)+月0.2万円(定期昇給分)。

到達額に最も大きな差を生んだのは、0.7万円の上乗せ分、つまり「ロ」区分を取れたかどうかでした。

改定率が何%になるかは、確かに大きな関心事です。ただ、自法人の収入に直結するのは、そのプラス分がどこに配分されるか。前回がそうだったように、取り組みの有無で差がつく設計になるのかどうかが、12月のとりまとめで見えてきます。

処遇改善加算の「イ」と「ロ」を分ける3つの要件については、別の記事で整理しています。

【処遇改善加算ふりかえり】すでに65%が「ロ」区分算定へ

記事を読む

4. 改定率をめぐる、3つの立場

改定率の議論には、大きく3つの立場があります。

財務省は、給付の効率化・適正化を求めています。介護サービスの収支差率が他産業と比べて高いという指摘です。改定率を抑える方向の主張になります。

与党は、プラス改定を求めています。自民党の社会保障制度調査会介護委員会が令和8年5月12日にまとめた決議は、①物価上昇への十分な措置、②実効性のある介護人材確保対策、③他職種と遜色のない処遇改善、④事業者の事務負担等に配慮した報酬の在り方の見直し、の4本柱です。

現場・業界側からは、「収支差率が高い」という指摘に対して、平均値の取り方への反論が出ています。

ここは、分科会の資料そのものが参考になります。令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算)をもとにした数値は、サービス間でかなり差があります。

サービス収支差率(令和6年度決算)
訪問看護10.3%
訪問介護9.6%
通所介護6.2%
居宅介護支援6.2%
通所リハビリテーション2.0%

さらに、同じ訪問介護の中でも分かれます。第271回分科会の資料には、同一建物減算の算定有無別の収支差率が載っています。

区分収支差率
同一建物減算あり(10%減算)11.5%
同一建物減算あり(12%減算)7.7%
減算なし10.0%
訪問介護の収支差率(全国平均9.6%)の内訳。同一建物減算あり(10%減算)11.5%、減算なし10.0%、同一建物減算あり(12%減算)7.7%

「訪問介護9.6%」という一つの数字の中に、これだけの幅があります。平均値だけで判断すべきではない、という指摘は、分科会の委員意見としても資料に記載されています。

5. すでに、各論の「対応案」が出始めています

10月に入ってから、分科会ではサービス種類別の資料が「論点及び対応案」という形で示されるようになりました。10月19日の第271回では、訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・居宅介護支援が取り上げられています。

訪問介護の資料から、2つだけ紹介します。

一つめ。同一建物等居住者への報酬の在り方です。

資料の対応案には、こう書かれています。

移動等のコストを踏まえた適切な評価を行うとともに、事業所の規模、1回当たりの移動コストの低さ、サービス提供回数の多さに着目し、現行の減算による評価に代えて、移動コストやサービス提供の実態をより適切に反映した報酬区分の見直しを検討してはどうか。

「減算」から「報酬区分」へ。考え方の枠組みそのものを変える案が出ている、ということです。

10月14日の第270回では、通所介護・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護にも、同じ考え方の対応案が示されています。同一建物減算の見直し案は、シリーズの各論1で詳しく整理します。

二つめ。サービス提供責任者の負担軽減です。

資料に載っている調査結果(令和8年度老人保健健康増進等事業、n=516事業所)で、サ責が求められる役割を十分に果たせない理由として挙がっているのは次の通りです。

サービス提供責任者が役割を十分に果たせない理由。訪問介護員が不足しており、サ責が訪問に入らざるを得ない74.2%、記録・報告書の作成、請求事務等の事務作業の負担が大きい58.5%、利用者・家族やケアマネ等との連絡調整、急な変更への対応に時間を取られる43.0%

2番目が記録・報告書・請求事務です。これに対する対応案として、初回加算の算定対象を「初回サービスへの同行」に限定せず、新たに訪問介護計画を作成するにあたりサ責が訪問してアセスメントを実施した場合も対象とする案、訪問介護員の訪問中にサ責がオンラインで面談・状況確認を行った場合も評価できる仕組み、といった検討が示されています。

いずれも「〜してはどうか」という段階で、決定ではありません。ただ、視点④の「生産性向上」が、各論ではこうした形で降りてきているということです。

6. 障害福祉サービスも、並行して動いています

障害福祉サービス等報酬改定検討チームでも、令和9年度改定に向けた議論が進んでいます。令和8年8月27日の第62回で「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」が示され、9月28日の第64回では就労系サービスに係る報酬・基準が議題になりました(厚生労働省 障害福祉サービス等報酬改定検討チーム)。

こちらも方向性の段階です。詳細は別の記事で整理します。

7. このシリーズで読んでいく論点

5つの視点のうち、どの論点を各論で詳しく見ていくかを図にまとめました。各論の記事は、公開しだい下の一覧に追加していきます。

シリーズ「2027年度 報酬改定を読む」の見取り図。総論で5つの基本的な視点(①物価・賃金の上昇等への対応と処遇改善、②人口減少・サービス需要に応じたサービス提供体制の構築、③地域包括ケアシステムの深化、④職場環境の改善と生産性の向上、⑤制度の安定性・持続可能性の確保)を整理し、各論1 同一建物減算の見直し案(視点⑤)、各論2 サ責の事務負担と生産性向上(視点④)、各論3 算定率の低い加算のゆくえ(視点⑤)、各論4 特定地域サービスとは(視点②)、各論5 LIFEと科学的介護(視点③)、各論6 障害福祉報酬改定の論点で詳しく見ていく。最後に12月のとりまとめ(審議報告)を読む
  • 各論1「減算」から「報酬区分」へ──同一建物減算の見直し案が意味すること視点⑤(近日公開)
  • 各論2サ責の58.5%が「記録・請求事務の負担が大きい」と答えた視点④(近日公開)
  • 各論3算定率の低い加算はどうなるのか視点⑤(近日公開)
  • 各論4「特定地域サービス」とは何か視点②(近日公開)
  • 各論5LIFEと科学的介護は次の改定でどうなるか視点③(近日公開)
  • 各論6令和9年度 障害福祉報酬改定の論点を整理する障害福祉(近日公開)
  • 締め12月のとりまとめを読む(近日公開)

☝️ 今すぐ確認できること

※チェックは保存されません。ページを開き直すと外れます。

まずは、現状の確認から

具体的な単位数や算定要件が見えてくるのは、年明け以降です。現時点で決まっているものはありません。

それでも、「どこに重点が置かれようとしているか」は、いま公開されている資料から読めます。確定した情報が出てきたタイミングでは、毎月1日を目処に更新している「2027年報酬改定ニュース」でお伝えします。

まずは「今、自法人がどこに立っているか」を確認するところから、一緒に一歩ずつ進めていきましょう。

シリーズ「2027年度 報酬改定を読む」のご案内

この記事は、シリーズの総論です。最初の各論1では、訪問介護・通所介護の同一建物減算を「報酬区分」に見直す案を取り上げます。

出典

赤沼 紗織

赤沼 紗織

社会福祉士取得後、生活相談員、MSWを経て2020年にケアコラボに入社。社会学修士。 医療・介護の現場での経験を活かしつつ、お客様とケアコラボの距離をもっともっと近づけていきたいです。 ケアコラボメンバーのことはもちろん、私たちの想いをいろいろな形で伝え続けたいと思っています。

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